世界中が注目した中国の共産党大会が閉幕した。23日には新体制で最初の政治局常務委員会が開催され、習近平独裁政権を支える6人の政治局常務委員がメディアを通して世界中にお披露目された。得意そうな習近平総書記とは対照的に6人のサムライたちは緊張感をみなぎらせていた。無派閥の1人を除いてすべて習派。時事通信によると「習氏の演説中、他のメンバーは直立不動の姿勢を維持。日本の官房長官に当たる中央弁公庁主任の丁薛祥氏は正面ではなく習氏の方にばかり視線を向けていた」と記者会見の様子を伝えている。サムライ達の内面を支配している情景は、習総書記に対する「絶対的な忖度」といったところか。新体制に総書記の後継候補は見当たらず、ブレーキ役となるはずの長老も不在。総書記がたった1人ですべてを決定する構造になっている。第2のプーチンが誕生したことになる。
新体制の極め付けは李強か。日経新聞によると同氏は「習氏が浙江省党委書記として赴任した時代に2年半ほど党委秘書長として習氏のサポート役を務めた。そこで厚い信頼を得たといわれる。浙江省の生まれで、17歳から故郷・瑞安県で農機などを扱う労働者として働き始めた。その後、共産党に入り、たたきあげの役人として浙江省内の県や市で地道にキャリアを積んできた」とある。習氏との出会いがこの人の人生を変えた。習氏が上海市から中央に転出してからは浙江省長、江蘇省党委書記と出世を重ねた。習政権が2期目に入った2017年10月の第19回共産党大会で中央政治局入りを果たし、最高指導部への登竜門の一つとみなされている上海市党委書記に就任した」。絵に描いたように出世街道だ。そしてとうとう、中央政治局常務委員まで上り詰めたのである。
政治家としての実績はあるか。「上海市党委書記としては2022年3月から約2カ月間、新型コロナウイルス対策のために上海市の事実上の都市封鎖(ロックダウン)を実施した」、これが同氏の輝かしい実績のようだ。おかげで上海市のコロナは短期間で終息した。だがその一方で上海市民の死ぬほどの苦しみには目もくれなかった。ここの人が李克強氏の後を継いで来年の3月には首相に就任するらしい。ロックダウンで培った実績が14億の中国人民のコントロールに役立つのだろう。この先は推して知るべしか。毛沢東路線の復活を目指す習総書記の政治スローガンは「共同富裕」、李氏は首相としてこれを実践するのだろう。西側にとって中国が脅威になるのは改革派が実権を握った時だ。習氏への権力一極集中は同氏にとっては「明るい未来」を切り開く手段になるのだろうが、西側にとっては逆だ。文化大革命と同じように中国の衰退に向けた一里塚だ。