[パリ/東京 23日 ロイター] – 日産自動車と仏ルノーは、出資や提携関係の見直しを巡る協議を今も続けている。ルノーの電気自動車(EV)事業新会社における技術の知的財産の共有を巡り、最終的な詰めの作業を行っている。事情に詳しい複数の関係者がロイターに明らかにした。
両社は先週、アライアンス(連合)の強化と将来に向けて協議中と発表。ルノーのEV事業新会社への出資について日産が検討していると明らかにした。出資関係も見直しており、ルノーは日産への出資比率を現在の43%から最終的に15%へ引き下げる代わりに、EV新会社への出資と参画を日産に求めている。
ルノーはこの計画の詳細について投資家向け説明会を11月8日に開く予定で、関係者らによると、同日までに日産の同意を得たい考え。連合を組む三菱自動車を含む3社の取締役が東京で11月15日に集まる予定で、この日に正式発表することも目指している。ただ、まだ最終決定はしておらず、数週間かかる可能性もある、と関係者の1人は話している。
日産はEV新会社に出資する意向はあるものの、複数の関係者によると、知的財産の共有が協議の焦点となっている。現行の車載用リチウムイオン電池よりも高密度で安全性が高い開発中の全固体電池など先端技術の扱いに特に日産は懸念を示している。
関係者の1人は「(ルノーにとって)重要なのは、日産が知的財産、技術者、共通のプロジェクトで何を持ち寄るかだ」と語り、「アライアンスの刷新には財務面以上の連携も必要だ」と話している。
ルノーと日産は、ロイターの取材に対してコメントを控えた。
経営危機に陥った日産をルノーが救済するため、両社の資本関係は1999年から始まった。現在はルノーが日産に43%、日産がルノーに15%を保有するが、日産には議決権がない。だが今では日産は事業規模などでルノーを上回り、ルノーの業績を支えている状態で、日産は20年以上続く不平等な資本関係の見直しをたびたび模索してきた。
資本関係についてはEV新会社を機に対等になる可能性が出てきたが、ルノーの優位性はこれまで開発業務でも維持されることが多く、日産の多くの幹部がアンバランスと考えてきた。
フランス政府はルノーの株式15%を保有しており、同国のルメール経済財務相は18日(パリ時間)、ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)とさらに協議すると発言、ルノーが産業・技術面で優位性を維持することを望むと述べた。関係者の1人によると、ルメール経済財務相の発言を受け、日本の経済産業省も日産側に問い合わせたという。経産省から現時点ではコメントを得られていない。
ルノーは今年2月、EVと内燃エンジンの事業を分離し、EV新会社の設立と上場を目指す構想を発表。デメオCEOの戦略では、「ホース」と呼ぶ内燃エンジン事業は中国の浙江吉利控股集団に売却し、「アンペア」と呼ぶEV新会社はルノーが過半数の株式を持ち、2023年下期にも株式を上場し、約1万人を雇用する方針。
米通信社ブルームバーグ・ニュースは今月10日、日産がEV新会社に5億─7億5000万ドル(約730億―1100億円)出資する用意があると報じたが、複数の関係者はロイターの取材に対し、現時点では日産がルノーにどの程度出資するか、その価格も合意に至っていないという。
関係者の話では、ルノーはEV新会社の成功に向けて協議を想定通り早くまとめたいが、日産は費用対効果を株主に説明する必要もあるとして協議を慎重に進めている。日産同様にEV新会社への参画・出資を求められている三菱自は「現段階で詳細な検討には入っていない」(広報)。
別の関係者によると、三菱自の本格検討は「日産・ルノーの協議がまとまってからになる」。三菱自も20年3月期を最後に無配が続いており、高額な出資は株主への説明が難しく、出資する場合は良好な提携関係を維持するため数%程度になるとしている。