旧統一教会との関係が相次いで明らかになっている山際経済再生担当大臣は、24日夜、岸田総理大臣に対し、政権運営に迷惑をかけたくないとして、辞表を提出し辞任しました。事実上の更迭とみられます。

山際経済再生担当大臣は、24日夜、総理大臣官邸で岸田総理大臣と短時間会談しました。

このあと山際氏は記者団に、「岸田総理大臣に辞表を提出してきた。国会で予算委員会が一巡し、これからの国会審議を考えた時に、さわらないようにするべきではないかと考えてきた。このタイミングを逃すわけにいかないと思った」と述べました。

そのうえで、「資料を1年ごとに片づけるということをやってきたため、さまざまな過去の出来事を調べられない状況にあった。したがって、外部から指摘されることによって説明するという後追いの説明の形になり、それが政権に対し、迷惑をかけることになった」と述べました。

岸田総理大臣は経済対策や補正予算案、それに旧統一教会の被害者救済などに優先して取り組みたいとして、辞表を受理し、山際大臣は、辞任しました。

山際氏は、衆議院神奈川18区選出の当選6回で54歳。

獣医師などを経て、平成15年の衆議院選挙で初当選しました。

去年10月の岸田内閣発足に伴い、経済再生担当大臣として初入閣し政権が掲げる「新しい資本主義」や新型コロナ対策なども担当し、ことし8月の内閣改造で留任していました。

しかし、旧統一教会をめぐり、先月、自民党が所属の国会議員を対象にした調査結果を公表したあとも、過去に教会主催の会合に出席していたり、会合でハン・ハクチャ総裁と会い集合写真を撮っていたことなど、「記憶にない」としていた関係が外部の指摘で相次いで明らかになっていました。

このため、野党側は山際氏の更迭を求めるなど、追及を強める中、岸田総理大臣が事実上更迭したものとみられます。

岸田首相 山際氏の申し出を了承 後任は25日に発表

岸田総理大臣は24日夜7時半すぎ、総理大臣官邸で記者団に対し、「先ほど、山際大臣からみずからの政治行動に関連し『経済対策や今年度の補正予算案をはじめとする国会審議に支障や滞りが生じる事は本意ではなく、職を辞したい』という申し出があった。経済対策や補正予算案、旧統一教会に関する被害者救済や再発防止といった重要な課題に専念し、それを最優先にすることから申し出を了とする事を決断した」と述べました。

そのうえで、山際大臣の後任について、「あす発表し、あす夕刻、所定の手続きを済ませたい」と述べました。

また、みずからの任命責任について、「当然、感じている。任命責任を感じているからこそ、職責をしっかりと果たすことによって責任を果たしていきたい」と述べました。

一方、今月まとめる総合経済対策については、「各党からの提案を受けて、最終取りまとめの段階だと認識している。月内の取りまとめについては、予定どおり行いたい」と述べました。

自民と立民の国対委員長が協議

山際大臣の辞任を受けて、24日夜7時半すぎから、自民党の高木国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長が国会内で会談し、25日の国会審議について協議しました。

この中で高木氏が、「国会運営にもご迷惑をおかけすることになる」と謝罪したのに対し、安住氏は、予算委員会直後に辞任するのは不誠実だなどとして抗議しました。

そして、両氏は、衆議院で25日午前中に予定されていた委員会の審議は行わず、午後1時からの本会議については25日、与野党各党の国会対策委員長会談を開いて、改めて協議することになりました。

また、議院運営委員会の理事会に、松野官房長官の出席を求めて、これまでの経緯について説明を受けることになりました。

25日の衆議院本会議では、安倍元総理大臣に対する追悼演説を、立憲民主党の野田元総理大臣が行う予定となっていて、会談後、安住氏は記者団に対し、「追悼演説は、通常の国会日程とは違うので、考慮の余地がある」と述べました。

また自民党の高木国会対策委員長は、記者団に対し「進退については、山際氏本人が重い判断をしたと思われるので、コメントは控えさせていただく」と述べました。

山際大臣 議員辞職は否定

山際経済再生担当大臣は、記者団に対し「説明責任は国会議員も果たしていかないといけないと思うが、閣僚は、より一段重い立場だと思っている。会合に何度か出席したことが、団体に信用を与えるような結果となってしまったことについては深く反省しており、これからは、そういうことがないようにしていきたい」と述べました。

そのうえで「国会議員として、何か法に触れるようなことをやってきたわけではないので、国会議員の活動は、しっかり信用を取り戻すためにこれからも続けたい」と述べ、議員辞職は否定しました。

山際大臣 辞任の経緯

山際大臣は、去年10月の岸田内閣発足に伴い経済再生担当大臣として初入閣し政権が掲げる重要政策「新しい資本主義」や新型コロナ対策などを担ってきました。

岸田総理大臣は、ことし8月に内閣改造を行うにあたって、すべての閣僚に対し、旧統一教会との関係を点検して厳正な見直しを行うよう指示し、山際大臣は留任しました。

この際、山際大臣は、旧統一教会との関係を点検した結果として、過去に関連団体に会費を支払っていたことや、関連団体のイベントに出席していたことを明らかにしました。

そして、自民党が所属の国会議員を対象に行った調査の結果、関連団体の会合に出席してあいさつなどを行っていたと追加で公表されました。

しかしその後も山際大臣は◇教会主催の会合に出席していたことや、◇会合でハン・ハクチャ総裁と会い、集合写真を撮っていたことなど「記憶にない」としてきていた関係が外部の指摘で相次いで明らかになりました。

そのたびに山際大臣は「覚えていない上、事務所にも資料がなく、事前に確認できなかった」と釈明し、陳謝に追われました。こうした状況を受けて野党側は、山際大臣は閣僚の資質はないなどとして辞任を求めて追及を強めていたほか、与党の公明党からも「説明が明快ではない」などといった指摘が出されていました。

山際大臣と旧統一教会

山際経済再生担当大臣をめぐっては、旧統一教会やその関連団体との関わりが次々と明らかになっていました。

ことし8月には、自身が代表を務める政治団体が平成25年3月に関連団体の「平和大使協議会」に会費として1万円を支出していたことがわかりました。

その後、旧統一教会や関連団体が主催するイベントや会合に参加していたことも明らかになり、
▽平成28年には関連団体がネパールで開いたイベントに、
▽平成23年にはナイジェリアで行われた関連団体の会合にそれぞれ出席していました。

さらに山際大臣は10月、
▽4年前の平成30年に旧統一教会が主催した都内の会合で、旧統一教会のハン・ハクチャ総裁に会ったことや、
▽3年前の令和元年に、名古屋市のホテルでハン・ハクチャ総裁に会い、集合写真を撮影していたことを明らかにしていました。

自民党 党三役経験者「判断遅かったことは否めない」

自民党の党三役経験者は、NHKの取材に対し「残念だが、これから補正予算案の編成というタイミングなので、影響のないよう、山際大臣は辞任の判断をしたのだろう。ただ、判断が遅かったことは否めない」と述べました。

自民党岸田派 閣僚経験者「ギリギリのタイミング」

自民党岸田派に所属する閣僚経験者は、NHKの取材に対し「率直に驚いたし、政権へのダメージは一定程度避けられない。一方で、補正予算案の国会での審議を控える中で、ギリギリのタイミングでの判断だったと思う」と述べました。

自民党の閣僚経験者「もっと早く辞任申し出るべき」

自民党の閣僚経験者は、NHKの取材に対し「国民の理解を得る説明はなされていなかったので、辞任は当然だ。総合経済対策の策定を間近に控え、異例のことであり、もっと早く、山際大臣みずからが辞任を申し出るべきだった。ただ、政権への影響は辞任したことによって限定的ではないか」と述べました。

自民党の閣僚経験者「最後まで守って欲しかった」

自民党の閣僚経験者は、NHKの取材に対し「山際氏は機転が利き、優秀な人材だ。岸田総理大臣は、今年度の第2次補正予算案を成立させるためには、もう山際氏を守りきれないと思ったのかもしれないが、ここまで守ってきたのであれば、最後まで守って欲しかったという気もする」と述べました。

参院自民党幹部「判断遅かった」

参議院自民党の幹部は、24日夜、NHKの取材に対し「このタイミングで山際大臣が辞任の意向を固めたことは、この問題を引きずるよりはよかったが、判断は遅かった。政府・与党としては、こういう時だからこそ、総合経済対策について、規模を含めてしっかり打ち出していくしかない」と述べました。

公明 山口代表 “岸田首相から連絡あった”

公明党の山口代表は、国会内で記者団に対して、岸田総理大臣から山際経済再生担当大臣の辞意について連絡があったと明らかにしました。そのうえで、山口氏は「これまでの答弁ぶりが明快さを欠いていると指摘したが、今回の予算委員会などでもそれが解消されたとは言えない印象だ。本人が辞任を決断したのならばやむをえない」と述べました。

また、政権運営への影響について「政権への影響は分からないが、とにかく事態を早く収拾して、次の体制を整えることが大事だ」と述べました。

公明党幹部 “政権にとって大きな話”

公明党幹部は24日夜、記者団に対し「政権にとって大きな話だ。総合経済対策を策定している中で、補正予算案の議論もこれからあるのに先が見えない」と述べました。

立民 泉代表「任命責任は重大」

立憲民主党の泉代表は、記者団に対し「旧統一教会との関係をさすがに隠しきれず、ごまかしきれなくなったのではないか。本来は臨時国会前に辞任すべきだ。政府の総合経済対策の発表直前に担当大臣が辞めることにより大きな混乱と国民生活への悪影響が出てくるので、岸田政権そのものが信頼を失っていくことになる。岸田総理大臣の任命責任は重大だ」と述べました。

立民 安住国対委員長「遅すぎる」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「ひと言で言って遅すぎだ。山際大臣は事実関係を誠実に答えず、後追い、後追いで、岸田総理大臣は臨時国会が始まる前に更迭すべきだった。政権全体のマネージメントが本当に問われる事態だ」と指摘しました。

そのうえで、「ほかにも旧統一教会との関わりが明らかになる閣僚がいて、放置すれば、岸田内閣の屋台骨が揺らぐどころか、崩壊する。教会の解散命令請求や自民党の調査に本腰を入れないと、いつまでたっても同じことを繰り返していくと危惧している」と述べました。

また安住氏は、今後の国会日程について、「不正常な状態に陥る可能性もある。もう1回、予算委員会を開いて、岸田総理大臣をただしたい。政府には国会に経緯を説明する責任がある」と述べました。

さらに「岸田総理大臣からは、衆議院として、直接、話を聞かないといけない。山際大臣の辞任は時間の問題であったのに、ここまで引き延ばしたのはなぜなのかを聞く舞台を設定できないか、話し合いたい」と述べました。

維新 馬場代表「疑惑なくなるわけではない」

日本維新の会の馬場代表は、NHKの取材に対し「『これ以上、岸田総理大臣に迷惑をかけられない』という判断で決断したのだろう。政治家の出処進退は自身で決めるものであり、辞任そのものは受け止めるが、この間の疑惑がなくなるわけではなく、説明責任は果たさなければいけない」と述べました。

共産 小池書記局長「遅きに失した 任命責任も」

共産党の小池書記局長は、NHKの取材に対し「遅きに失した。国会答弁に行き詰まって辞任に追い込まれたということで、決断できない岸田政権の問題点がはっきりした。ただ辞めればいいのではなく、山際大臣には旧統一教会との関係をすべて明らかにすることを求めたい。岸田総理大臣の任命責任も問われる。すべての閣僚を調査すべきだ」と述べました。

国民 玉木代表「判断遅すぎる 首相には説明責任」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「問題を認識していたのであれば、もっと早く辞めるべきだったし、とにかく判断が遅すぎることに尽きる。旧統一教会の影響を受けないための布陣にしたはずの内閣改造は何だったのかと言わざるをえず、岸田総理大臣自身の説明責任も果たしてもらわなければいけない。後任選びも含め、政策の推進に停滞が生じないよう万全を期してもらいたい」と述べました。

れいわ 山本代表「苦しむ人々 理解しない大臣」

れいわ新選組の山本代表は、「コロナ禍で苦しむ人々や事業者の状況を理解しようともしない経済再生担当大臣だった。そのクビをとることになるのが旧統一教会であったなど、山際大臣とつながりが深いと言われる『真のお母様』でもわからなかっただろう」というコメントを出しました。

山際氏の支援団体の幹部は…

支援団体の幹部、山田隆さんはニュースで山際氏の辞意を知ったといい、「旧統一教会との関わりについて最後まで説明しなかったし、遅すぎると思う。今月、地元の支援者への説明会を開く話もあったが延期になり、その後、連絡も動きもなかった」と話していました。

20年以上支援を続けているという80代の男性は、「旧統一教会と具体的にどういうつながりがあったのか支援者で知る人はおらず、説明してほしかった。いつか総理大臣になるということで支えてきたのに、非常にショックで残念だ」と話していました。