[シャルムエルシェイク(エジプト) 20日 ロイター] – 国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は20日、気候変動に起因する発展途上国の「損失と被害」の支援に特化した基金設立に合意した。
気候変動をもたらした過去の温室効果ガスの大半を排出しながら、こうした基金立ち上げに強く抵抗してきた先進国をようやく説得できた形。先進国への働きかけの一翼を担っていたパキスタンのレーマン気候変動相は、気候変動問題で公正性への対価が支払われることになる画期的な合意だ、と高く評価した。
ただ基金の運営に関する幾つかの重要な詳細部分、とりわけ基金の拠出者と受益者がどうなるかを詰める作業は、来年以降に持ち越される。
今回の合意を巡るポイントは以下の通り。
◎損失と被害とは
国連における気候変動問題についての交渉で、「損失と被害」は海面上昇など気候変動に起因する異常気象や災害で途上国が受けたダメージを指す。
これまで気候変動対策としての資金調達は、温暖化を抑えるための二酸化炭素(CO2)排出量削減に重点が置かれ、資金の3分の1前後は将来の気候変動が環境に及ぼす影響に地域社会が適応していくのを後押しするプロジェクトに振り向けられてきた。
損失と被害は、そうした適応が不可能であったり、ダメージを避けられなかったりする国のコストをカバーすることに特化するという点で事情が異なる。
ただ現段階では、気候変動による「損失と被害」の認定基準も定まっていない。対象には打撃を受けたインフラや不動産、あるいは価値評価がより難しい生態系や文化的な資産も含まれる可能性がある。
「脆弱な55カ国」が試算した過去20年にわたる被害総額は5250億ドルと、これらの国々の国内総生産(GDP)の20%に相当する。ある調査によると、そうした被害額は2030年までに年間5800億ドルに達しかねないという。
◎誰が誰に払うか
「脆弱な諸国」や環境団体などは、過去の温室効果ガス排出でこれまでの気候変動のほとんどの原因を生み出してきた先進国が費用を支払うべきだと訴えてきた。
米国や欧州連合(EU)は負担が膨れ上がるのを恐れ、これに抵抗していたものの、COP27では姿勢を転換。またEUは、世界第2位の経済規模でありながら国連が途上国に分類している中国も、費用を支払う必要があると主張している。
途上国の損失と被害について、デンマーク、ベルギー、ドイツなど幾つかの国は比較的小規模だが象徴的な意味を持つ資金拠出を約束した。中国は支払うと表明していない。
既存の国連や開発銀行による資金提供でも損失と被害への支援につながるが、これらの枠組みは正式に損失と被害向けとうたわれているわけではない。
さらに補償を受ける資格のある国、もしくは災害の詳しい定義付けもこれからの宿題として残っている。
◎COP27における基金の合意内容
合意文書には、気候変動に対して「とりわけ脆弱な」途上国を支援することを目的とすると記された。これは補償対象をできるだけ狭め、最も緊急を要するケースに資金を投入する方向へ確実な道筋をつけたい先進国側の希望による。
基金の統括者や支払い方法、受け取り先などの決定は来年のCOPで決めることを要望する提言などを盛り込んだロードマップも提示されている。
資金拠出は先進国だけに頼らず、金融機関などにも求めていくという。
グテレス国連事務総長は、化石燃料企業の利益に対する課税を資金源の1つにすることを提案している。