[東京 10日 ロイター] – 日銀の雨宮正佳副総裁は10日、衆院・財務金融委員会で、2%物価目標の持続的・安定的な達成にはまだ距離があると話し、「現在の金融緩和政策を維持することが適当だ」と述べた。イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の効果と副作用を検証しながら、できるだけ副作用を緩和して効果が出るような努力を続けるとする一方、現段階ではYCCの「さらなる柔軟化が必要とは考えていない」と語った。
前原誠司議員(国民民主党・無所属クラブ)の質問に答えた。
雨宮副総裁は、昨年12月の長期金利の変動幅拡大後もイールドカーブのゆがみは残っているが「改善には向かっている」との認識を示した。共通担保オペも組み合わせながら、機動的な市場調節を行い、市場機能の改善を図っていくとした。
雨宮副総裁は次期日銀総裁の有力候補の1人とみられ、6日には日本経済新聞が政府が雨宮氏に次期総裁への就任を打診したと報じた。
政府は、14日に日銀の正副総裁の人事案を国会に提示する。
<日本にはデフレという特殊事情、2%目標の実現が必要>
雨宮副総裁は、現在の金融政策の枠組み維持を強調した。前原議員が、10年の異次元緩和でも達成できていない2%物価目標について「そもそも無理があったのではないか」と問い掛け、目標の見直しを求めたのに対して「現段階では、グローバルスタンダードである2%の安定的・持続的な実現を目指すことが適当だ」と述べた。
雨宮副総裁は、海外中銀が採用していることやデフレリスクが高まった際に政策対応の余地を残す観点から2%目標が適当だと話し、2%目標の下で金融政策運営に当たってきた結果、「経済・物価状況は大きく改善した」と述べた。「日本では長年デフレが続いたという特殊な状況があるがゆえに、2%目標を実現するのが必要だ」とも語った。
上場投資信託(ETF)の買い入れについては、株価操作が目的ではなく、危機時などの市場安定化に主眼を置いていると説明。「現段階は物価目標の実現になお時間を要する状況で、具体的なETFの処理を含めた出口政策について議論するのは時期尚早だ」と話した。目標の実現が近づけば、出口に向けた戦略や方針について金融政策決定会合で議論し、適切にコミュニケーションを図っていきたいとした。
(和田崇彦 編集:青山敦子)