[東京 14日 ロイター] – 東芝6502.Tは14日、2023年3月期通期の連結業績予想(米国基準)を下方修正し、営業利益を従来の1250億円から前年比40.2%減の950億円に引き下げた。ハードディスクドライブ(HDD)の市況が悪化し、保証引当金などが利益を圧迫したほか、連結子会社の東芝テック6588.Tの株価下落でのれんの減損が膨らむことなどが響く。

 下方修正は今年度2回目。IBESがまとめたアナリスト8人の予想平均値1270億円を下回った。

会見した平田政善専務CFO(最高財務責任者)は、HDD市況について、データセンター向けの需要の落ち込みが続いていると明らかにした。市場では23年10─12月に底打ち・回復の観測があるものの「この辺はもう少し見極める必要がある」と述べた。子会社で半導体製造装置を手掛けるニューフレアテクノロジーは好調だとし「今後も受注は堅調に続き、売り上げもあがっていく」との見通しを示した。

併せて発表した22年10─12月期の営業利益は前年同期比87.5%減の53億円、4─12月期は90.8%減の80億円だった。複合機などを扱うプリンティング事業で東芝テック6588.Tの株価下落に伴うのれんの減損に加え、発電システムの製品保証引当金なども響いた。

のれんの減損について、平田CFOは「今年はかなり東芝テックの株価がいたずらをした」と述べた。来年度は東芝テックの株価や為替の動向、事業計画の複合的な要因で決まっていくものの「相当程度改善する」との見方を示した。

今年度にかかる特別委員会関連費用は、株式公開買い付け(TOB)のプロセスに当初予定以上に時間がかかっているとし、従来見込みから60億円減らした。「3月末までの支払いにはなりにくいとの想定のもとに、いったん費用を外した」(平田CFO)とした。

東芝の通期純利益予想は非上場で半導体子会社のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)の予想値を策定できていないことから、非開示としている。キオクシアが同日に発表した2022年10─12月期決算は933億円の営業損失となり、806億円の黒字だった前四半期から大幅な減益となった。スマートフォンやデータセンター向けなどの需要が低迷して販売単価が下落、生産調整の影響を受けた。

同社は9日に日本産業パートナーズ(JIP)連合から買収の最終提案を受領したと発表しており、複数のメディアは買収額が2兆円規模になる見通しとしている。

SBI証券の和泉美治シニアアナリストは「一過性要因が多いとはいえ、全体的にさえない決算になってしまった」と指摘。当面は買収を望む候補者が減ってくる可能性についても触れ「銀行団も含め、現状の企業価値では割高とみる声も増えていくのではないか」との見方を示した。

(佐古田麻優)