[前橋市 22日 ロイター] – 日銀の田村直樹審議委員は22日、群馬県金融経済懇談会後の記者会見で、昨年12月の長期金利の変動幅拡大後も「債券市場の機能低下が解消していないのは事実だ」と述べた。日銀が再度の変動幅拡大に踏み切るかについては、機動的な市場調節を行い、市場動向を見極めた上で決定会合で政策の効果と副作用のバランスを考えていくと言及するにとどめた。
田村委員は午前の挨拶で、長期にわたる金融緩和の副作用を指摘。将来いずれかのタイミングで、金融政策の枠組みや物価目標のあり方を含めて点検・検証し、政策の効果と副作用のバランスを改めて判断することが必要だと述べた。会見では、点検・検証の具体的なタイミングについて問われたが「その時点での物価・経済・賃上げを踏まえて判断する」と答えた。
長期金利の変動幅拡大を受け、銀行の保有国債の含み損が急拡大した。田村委員は「現時点では、金融機関は全体として十分な自己資本を保有しており、有価証券関連収益の悪化が金融仲介機能や金融システムに与える影響は限定的だ」と述べた。その上で、金利動向やそのもとでの金融機関の有価証券投資を丁寧にモニタリングしていく方針を示した。
金融政策の正常化を進めていくときの金融機関収益への影響については、正常化のマグニチュード(規模)や速さによって変わってくるとの認識を示した。金利が上昇すれば「短期的には保有している国債の含み益が減る、あるいは含み損が膨らむという影響が出てくるが、長い目で見れば利ザヤの改善が期待できる」とした。
植田和男元日銀審議委員を総裁候補などとする日銀人事案については、コメントを控えるとした。先行きの金融政策の枠組みや物価目標のあり方を論じるのは「時期尚早だ」と述べた。田村氏は一般論とした上で、経済全体の需給や賃金状況など「消費者物価の背後にあるメカニズムをしっかり見ていくことが重要だ」と語った。
(和田崇彦)