[北京 1日 ロイター] – 中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5日に開幕する。習近平国家主席への権力集中が強まる中、ここ10年で最大の人事刷新を行う見通しだ。一方、新型コロナウイルス禍後のまだら模様の景気回復や対米関係の悪化など多くの課題にも直面している。

今回の全人代は「ゼロコロナ」政策解除後初めて開かれ、3000人近くの代表が北京の人民大会堂に集まる。

昨年10月に開かれた共産党大会では習総書記の異例の3期目が確定し、最高指導部は同氏に近い人物で固められた。全人代では習氏の国家主席としての3期目続投や新たな経済チームを承認する見通しだ。

また国営メディアによると、習氏は26─28日に開かれた第20期中央委員会第2回総会(2中総会)で政府と共産党組織の「集中的」かつ「広範」な再編計画に言及。全人代でこの計画が話し合われるという。

オーストラリア国立大学の政治学者Wen-Ti Sung氏は「党の包括的な指導という名の下に国務院の省庁を一段と党に組み込む可能性が高い」とし、公衆衛生や国家安全保障分野が焦点になるとの見方を示した。

関係筋やアナリストは今年の経済成長率目標について、失業率を抑えるため5─6%に設定される可能性が高いとしている。消費や海外投資を促す措置などを打ち出す見通しだが、抜本的な改革は見込まれていないという。

経済運営を担う首相には上海市党委書記を務めた李強氏(63)が就く見通し。投資家は習氏に近い李氏がよりビジネス寄りの政策を打ち出すことを慎重ながらも期待している。

全人代では、退任する李克強首相や経済通の劉鶴副首相ら改革派とみられる指導者に代わり、中国人民銀行(中央銀行)を含む主要な経済・規制当局のトップに新たな顔ぶれを据える予定だ。

李強氏は中央政府での経験を持たない初めての首相となることから、不安定な滑り出しになるとの見方もある。筆頭副首相に就くとみられる丁薛祥氏も中央での管理経験がない。

異例の抗議デモを受けて昨年12月に突然ゼロコロナ政策を解除した習氏にとって、今回の全人代は厳しい環境の中で開かれる。

中国の昨年の人口は1961年以来初めて減少し、都市部の就業者数も60年ぶりに減少。国民1人当たりの実質支出も減った。米国との関係悪化や世界経済低迷も習氏にとって逆風となる。

全人代は通常1─2週間開催される。李克強首相が冒頭読み上げる政府活動報告は、3年にわたるコロナ規制や不動産部門低迷で打撃を受けた経済への支援に焦点が当てられる見通し。

中国政策科学研究会の経済政策委員会の徐洪才副主任はロイターに対し「われわれは主に大規模プロジェクトに資金を注入することで成長促進に努める方針で、そのための政策ツールを有している」と述べた。