握手する(左から)サウジアラビアのアイバーン国務相、中国の王毅・共産党政治局員、イラン最高安全保障委員会のシャムハニ事務局長=10日、北京(ロイター時事)
握手する(左から)サウジアラビアのアイバーン国務相、中国の王毅・共産党政治局員、イラン最高安全保障委員会のシャムハニ事務局長=10日、北京(ロイター時事)

 【北京時事】中国は中東への関与を減らす米国の隙を突き、イランとサウジアラビアの関係修復を仲介した。全国人民代表大会(全人代)で習近平国家主席が3選した10日に発表されたイラン・サウジの合意は、習指導部が掲げる「大国外交」を演出する絶好の機会となった。

「対話と平和の勝利」 中国が成果誇示―サウジ・イラン仲介

 「中国は世界の問題処理に建設的役割を果たし、大国としての責任を示す」。中国外交トップの王毅・共産党政治局員は10日、合意を取り持った中国の役割を誇示した。中国外務省は、王氏がイランとサウジの代表者の間に立ち、力強く手を握る写真を国内外にアピールした。

 全人代期間中は例年、目立った外交活動が減るが、イランとサウジの協議は会期中の6~10日に北京で秘密裏に行われた。地域の大国同士を仲裁する実際の行動は、これまでの中国では異例だ。中東での中国の影響力拡大を示し、米国に揺さぶりをかける狙いがうかがえる。

 米国との長期対立を見越す習政権は、米国の関与が過去に比べ低下した中東へ積極的に接近。習氏は昨年12月、親米国でありながらバイデン政権と人権問題などを巡り溝があるサウジを訪れてサルマン国王らと会談。今年2月にはイランのライシ大統領が訪中し、対米共闘を印象付けた。

 バイデン米大統領が「民主主義国・権威主義国」の対立構図を唱える中、中国は民主主義を採用せずに発展を目指す国家の糾合を図る。中国外務省によると、中国、イラン、サウジの3カ国が10日発表した共同声明は「各国の主権尊重、他国の内政不干渉」といった文言が盛り込まれた。

 共産党機関紙・人民日報系の環球時報編集長を務めた胡錫進氏は11日、同紙英語版への寄稿で「米国は内心苦々しく、複雑に感じているはずだ」と指摘。中国はロシアが侵攻を続けるウクライナの和平交渉へ関与する姿勢も示しており、胡氏は「(今回の)仲裁成功でウクライナ危機の平和的解決を促す中国の発言権が増す」と主張した。