- クレディ・スイス急落、米国の警戒姿勢、米PPIと小売売上高
- 米利下げ観測高まる、ファースト・リパブリック格下げ
クレディ・スイス・グループ筆頭株主の発言をきっかけに銀行不安が再燃。世界的な株安・国債高になりました。欧州中央銀行(ECB)の政策決定会合を翌16日、米連邦公開市場委員会(FOMC)会合を翌週に控えたかなり微妙なタイミングで、市場を神経質にさせています。ともに利上げ観測は弱まっていますが、サマーズ元米財務長官は「物価安定の責務に注力しなければ、非常に深刻な間違いを犯すことになる」と警告しています。危機管理かインフレ退治か、金融政策当局は難しい選択を迫られています。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。
追加支援否定
クレディ・スイスの筆頭株主、サウジ・ナショナル・バンク(SNB)は同行に追加投資をすることはないと、SNBのアンマル・フダリ会長が語った。クレディ・スイス株はチューリヒ市場で一時31%安。終値では24%安となり、過去最大の下落率を記録。上場来安値も更新した。同行社債の保証コストは2008年の金融パニックをほうふつとさせる危機的な水準に上昇した。関係者によると、クレディ・スイス幹部とスイス政府当局者は、同行支援の声明を当局が発表することや流動性のバックストップなど複数の選択肢を話し合っている。
大き過ぎて
米財務省はクレディ・スイスに対する米金融業界のエクスポージャーを鋭意精査していると、事情に詳しい関係者が明らかにした。米財務省は欧州当局と緊密に連携しているという。クレディ・スイスはあまりに大き過ぎて救済できない可能性があると、著名エコノミストのヌリエル・ルービニ氏は警告。「問題はクレディ・スイスが資本を得られるかだ」とし、「さもなければ悪いことが起こり得る」と続けた。
物価の影響
2月の米生産者物価指数(PPI)は前月比0.1%低下と、予想(0.3%上昇)に反して低下した。米経済の一部で物価圧力が和らぎつつあることが示唆された。前年同月比では4.6%上昇と、予想の5.4%上昇を下回った。食品とエネルギー除くコアPPIも前月比、前年同月比ともに予想を下回った。2月の小売売上高は前月比0.4%減と、予想中央値と一致した。ガソリンと自動車を除いたベースでは横ばい。13カテゴリーのうち、家具や百貨店など8つで減少。消費支出は持ちこたえているものの、高インフレの影響を受けつつあることが示唆された。
5月をピークに
年内の米利下げ観測が強まっている。金利スワップ市場は5月に予想されるピークから、約100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを織り込んだ。ピーク金利の予想は4.86%前後で、来週のFOMC会合について想定される利上げ幅は0.25ポイントを下回る。年末の政策金利は3.93%前後が予想されている。見込まれるピーク時と年末時点の金利差は一時100bpを超えた。
格下げ
S&Pグローバル・レーティングは、米ファースト・リパブリック・バンクの格付けをジャンク(投資不適格)級に引き下げた。米当局が銀行セクター支援を表明したものの、ファースト・リパブリックの顧客が預金を引き出すとの懸念が続いている。S&Pはファースト・リパブリックの信用格付けを「BB+」とし、従来の「A-」から引き下げた。格付け見通しについては「ウオッチネガティブ」を維持する。ファースト・リパブリックは最近になり借り入れ能力を高めたものの、さらなる預金流出のリスクがあるとS&Pは指摘しており、今後格付けが一段と引き下げられる可能性がある。
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