- 欧州の銀行が発行したAT1債の指数の利回り、28日時点で13.5%
- 「銀行が近い将来に新たなAT1債を発行できるのか疑問」-ING
2560億ドル(約33兆5000億円)規模の「その他Tier1債」(AT1債)市場は、クレディ・スイス・グループの同債が無価値となった衝撃にまだ揺れている。
銀行規制当局や政治家から市場を落ち着かせようとする発言が相次いでいるものの、クレディ・スイス緊急救済の一環として同行のAT1債が無価値とされたことが大きな波紋を呼んでいる。AT1債の利回りは過去最高水準付近にとどまっており、AT1債を買い戻すという市場の慣例が今後数カ月に崩れ、投資家が債務を抱え込むことになるとの懸念が強まっている。
INGのクレジットストラテジスト、ティモシー・ラヒル氏は「銀行が近い将来に新たなAT1債を発行できるのか疑わしい」とリポートで指摘。「AT1債市場は宙に浮いたままで、同商品やひいては他の負債構造の実際の価値を巡る疑問は残る」と記した。
欧州の銀行が発行したAT1債の指数の利回りは28日時点で13.5%。クレディ・スイスの同債が無価値となった後に付けた過去最高水準からは小幅に低下。2月には一時7.8%まで下がっていた。
AT1債を発行している銀行は債権者と株式保有者、規制当局それぞれの利益のバランスを取るという難しい判断を迫られている。借り換えコストが高いことを踏まえると、ファーストコール日(発行体が満期前に繰り上げ償還できる最も早い日)を見送り、発行済み債券のクーポンを支払う方が割安かもしれない。
ケプラー・シュブルーのクレジット調査責任者、セバスチャン・バルテレミ氏は「波及しないにせよ、ストレスや懸念は続く」と指摘。「市場がクレディ・スイスの件を消化し、完全に安心するにはしばらく時間がかかる」と話した。
原題:AT1 Yields Near Record Show Lasting Damage From Credit Suisse(抜粋)