- デーリー総裁就任以降、SF連銀では監督担当官の交代相次ぐ
- ベテラン監督官ならバランスシート見ただけでピンとくる-専門家
シリコンバレー銀行(SVB)が破綻に至るまでの当局の監督を巡っては、管轄地区のサンフランシスコ連銀のみならずワシントンの連邦準備制度理事会(FRB)スタッフに至る連邦準備制度全体に落ち度があった。
複数の関係者によると、銀行監督で経験豊富な人材の登用よりもスタッフ間の関係改善を優先するデーリー総裁の下、サンフランシスコ連銀ではここ数年に監督担当官の交代が繰り返された。関係者4人の情報によれば、ワシントンのスタッフはデーリー総裁による連銀運営に関する懸念を複数の当局者に伝えていた。
「著しい監督不行き届きがあった」と語るのは、タルーロ元FRB理事。金利の急上昇でダメージを受けやすい銀行に対するストレステストが不十分だったと、先週ブルームバーグテレビジョンで指摘した。
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米上院銀行委員会が28日に開いた公聴会で、バーFRB副議長(銀行監督担当)は、SVBに対しては監督官らが何度も警告を発したと説明。その破綻はまずい銀行経営を説明した「教科書のようなケース」だと述べた。
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エコノミスト出身のデーリー総裁はサンフランシスコ連銀に20年余り勤めた後、2018年に総裁に就任。内部情報であることを理由に匿名で話した複数の関係者によれば、高官らの幸福度押し上げに過度に熱心な同氏のチーム運営に批判の声が挙がっている。
総裁就任から約1年が経過したある日、総裁は監督部門の幹部を会議に招集。行員の満足度を問う内部調査の結果が出た直後で、監督部門は満足度が行内で最低だった。デーリー総裁は幹部らを叱責(しっせき)し、このまま働き続けたいかどうかを週末かけて考えるよう言い渡した。
サンフランシスコ連銀の広報担当者は、当時のデーリー総裁としては士気の低さが監督のまずさにつながると考えていたと説明。これ以上の発言は控えた。デーリー総裁に対するインタビューの要請も受け付けなかった。ワシントンの連邦準備制度担当者もコメントを控えた。
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それ以降、サンフランシスコ連銀の銀行監督部門では人員の異動が繰り返されたという。2021年には部門責任者が引退したが、後任に就いたのは同部門出身ではなく監査部門の元責任者だった。
同連銀には、銀行参入を狙うハイテク企業の野心が行き過ぎないよう抑制しなくてはならないというサンフランシスコ特有の試練もある。フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズは4年前、世界規模の仮想通貨ネットワーク「リブラ」構想を発表。関係者2人の話によれば、サンフランシスコ連銀の一部はこの構想を知らなかった。
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コロンビア大学のレフ・メナンド准教授は「一番の疑問は、SVBがルールを軽視して適切な資本を積まずに大量の金利リスクを背負った事実を、なぜ監督当局は問題にしなかったのかということだ」と話す。「かなりあからさまで、特に奇抜なことでもなかった。ベテラン監督官ならバランスシートを見ただけでピンとくるはずだ」とブルームバーグのポッドキャスト、オッド・ロッツで語った。
バーFRB副議長は28日の公聴会でSVBの突然の破綻とその影響を巡り、超党派の議員からショックと怒りをぶつけられた。SVBのオフィスに連銀担当官が日々訪れていたのかどうかも、監督官がSVBのリスク委員会と面談したかどうかも、バー副議長は回答できなかった。
原題:SVB Mess Festered Under Fed’s Bureaucracy and Feel-Good Culture(抜粋)