岸田首相が応援演説をする会場周辺では警察官が等間隔に配置され、厳重な警備態勢が敷かれていた(15日午後4時11分、千葉県浦安市で)=飯島啓太撮影

 岸田首相が襲撃されたとの一報を受け、週末に多くの聴衆が集まったほかの国政選挙の演説会場では、警察が急きょ、警備の強化を図った。選挙戦終盤に向けて政党幹部を迎える陣営や関係者は緊張感を漂わせた。

補選

 「スタッフ、警備の指示に従って話をお聞きください」。事件の約5時間後、衆院千葉5区補選の応援で、首相が訪れた浦安市のJR新浦安駅前。演説が始まる前、陣営はアナウンスでそう呼びかけた。岸田首相が応援演説をする会場周辺では警察官が等間隔に配置され、厳重な警備態勢が敷かれていた(15日午後4時11分、千葉県浦安市で)=飯島啓太撮影

 事件を受け、千葉県警は即座に警備態勢を強化。壇上に立つ首相を警察官らが取り囲み、聴衆の前には機動隊員らがずらりと並んだ。続いて首相が向かった市川市のJR本八幡駅前でも、聴衆が立つ場所が指定され、それ以外の場所では、警察官が「お進みください」と呼びかけた。

 新浦安駅前で演説を聞いた浦安市の会社員の女性(59)は「暴力は許されない。言葉で主張してほしい」と憤った。本八幡駅の会場を訪れた市川市の団体職員男性(47)は「いくら警備がいても完全に防ぐのは難しいように思う。街頭演説のあり方も考える必要があるのでは」と話した。

 参院大分選挙区補選では15日夕、立憲民主党の泉代表が豊後大野市で、同党候補とともにマイクを握った。周囲は、聴衆の接近を遮るように棒などで円形に仕切られ、泉代表は「民主主義を守るためにも、ここでひるんではいけない」と演説した。首相も16日に大分県入りする予定で、県警は、配置する警察官を増員する。

 衆院山口4区補選は、昨年7月に演説中に銃撃された安倍晋三・元首相の死去を受けて行われている。自民党候補の応援で下関市を訪れた安倍元首相の昭恵夫人は、「本当にご無事でよかった。二度とこのようなことが起きないように願う」と話した。

G7

 一方、先進7か国(G7)の外相会合を翌日に控えた長野県警は、軽井沢町の会場や周辺に配置する警察官の増員を決定。県警は職務質問や所持品検査の徹底を図るほか、会場周辺では期間中、一般車両を通行止めにする。

 県警サミット対策課の鶴田将仁管理官は「これまでずっと準備してきた。万全の態勢で警備に臨む」と話した。