統一地方選挙の開票状況をチラチラ気にしながら、邦人救出を目指すスーダン・オペレーションの行方を見守っていた。一夜開ければ自民党の4勝1敗。勝つには勝ったが大方の選挙区は激戦。野党が統一候補者を立てれば、自民党が負けていただろう。邦人救出と解散の行方が今週の最大の焦点か、と思っていたら、駐仏中国大使が、「(ウクライナに)主権国としての地位を具体的に示す国際合意は存在しない」(時事通信)と発言して大炎上しているとのニュースが目に飛び込んできた。いやはや、解散どころの話ではない。発言の主は中国の盧沙野駐フランス大使。ブルームバーグ(B B)によると同氏は、21日放送された仏ニュースチャンネルLCIとのインタビューで、旧ソ連諸国の一部は国際法の下で有効な国家としての地位を有していないと発言した。なんという発言か。

フランス駐在の盧大使は過去にいくつかの問題発言を行なっている。BBによると同氏は攻撃的なスタイルで臨む「戦狼(せんろう)」外交官と知られているようだ。台湾人には「再教育」が必要、「外部勢力」がゼロコロナ政策への反対デモをあおったなど、数々の問題発言で話題になってきた。今回の発言を受けて旧ソ連邦に属していたラトビア、リトアニア、エストニアのバルト3国は、それぞれの国に駐在する中国大使を呼んで説明を求める意向を示した。フランス外務省は盧大使の発言に「失望」したと表明。ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、「全ての旧ソ連構成国は国際法に明記された主権国としての地位を有する」(時事通信)と反論している。日本政府がこの発言にどう対応したのか、ネット上のニュースを見る限り、はっきりした発言は確認できなかった。

中国の外交官は国外で過激な発言をすると、本国での評価が高まるのだろうか。習近平主席は3月にロシアを訪問、プーチンと会談してウクライナ戦争の和平仲介に意欲を示した。それに先駆けて「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」という文書を発表している。その文章の最初に書いてあるのが「すべての国の主権を尊重する」である。ロシアとの戦略的関係を強化している中国が、ウクライナ戦争に関して中立的かどうか、以前から疑問視する声がある。そんな中で登場した盧大使発言。「国際法の下で有効な国家としての地位を有していない」、つまりウクライナには主権がないと主張している。主権がないのだから国家としては認めない。ロシアは国家として認めるが、ウクライナは国家ではない。これでは和平の仲介などとてもではないが無理だ。中立な仲介者然とした中国の“化けの皮”を盧大使は自ら剥ぎとった。