バイデン大統領が2024年の大統領選への出馬を正式に表明した。有力候補のトランプ氏はすでに立候補を宣言している。これで有力候補2人が揃ったことになる。本来ならお祭り騒ぎに包まれてもいいはずだが、今回ばかりはお寒い大統領選のスタートといったところだ。ロイター/イプソスの世論調査では、「80歳のバイデン米大統領は高齢のため来年の大統領選に出馬すべきでないとの回答が民主党支持者の約半分を占めた」。それだけではない。日本では主流メディアはまったく報道していないが、バイデン大統領には息子であるハンター・バイデン氏に絡む疑惑が付き纏っている。IRS(米歳入庁)はバイデンファミリーを脱税で起訴する方針だと伝えられている。一方のトランプ大統領は業務記録改竄の容疑ですでに起訴されている。要するに疑惑の大統領選がスタートしたということだ。

これでは米国の有権者も盛り上がりようがない。だが民主、共和両陣営とも対立候補が見当たらない。民主党ではジョン・F・ケネディー元大統領の甥が立候補したが、叔父さんの威光はまるでないようだ。ヒラリー・クリントン氏ももはや過去の人か。対抗馬がなければ80歳の現大統領を担がざるを得ない。民主党の人材不足は目を覆うばかりだ。バイデン大統領の出馬宣言は事前に収録されたビデオの公開だけ。生での演説もなければ記者会見もない。これだと不規則発言や記者とのトンチンカンな応答は避けられる。減点回避の出馬宣言では有権者も反応しようがない。動画は、トランプ前大統領の支持者が2021年1月6日に連邦議会議事堂に突入した際の映像で始まっている。ネガティブキャンペーンといえばそれまでだが、なんとなく偏執狂めいている気がする。

バイデン氏は「米国の民主主義を守ることが自らの仕事だ」と表明、「4年前に出馬した時、私は私たちが米国の魂を懸けた闘いの中にいると言った。私たちはまだ闘いの中にいる」、「この仕事を終わらせよう。私たちにはそれができる」と訴えた。一方のトランプ氏、起訴されたことによって共和党内の支持が急拡大している。最大のライバルであるデサンティス・フロリダ州知事は、いまだに立候補宣言していない。トランプ氏の起訴という千載一遇の好機も活かせなかった。党内の支持率は開く一方だ。なんとなく立候補を躊躇っているようにみえる。最近はトランプ氏の露骨な個人攻撃にも沈黙を守っている。まるで“弱い候補”という印象だ。米国の大統領選挙はイメージ戦争でもある。ウクライナ侵略に台湾問題、世界中が戦争の危機に直面している。こんな時だけに大統領候補には実のある論戦を期待したいのだが、疑惑まみれの大統領選挙では所詮ということか。