ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は23日、ロシア軍との激しい戦闘が続く東部ドネツク州の前線を視察後のビデオ演説で、「パートナー国との交渉を終え、この視察が最後の要素だった」と述べ、ロシア軍への大規模な反転攻勢が近いことを示唆した。23日、ウクライナ東部ドネツク州で表彰した兵士らと記念撮影するゼレンスキー大統領(前列中央)=AP
ゼレンスキー氏は今月14日、反転攻勢の開始時期について、「あと数回の外国訪問が必要だ」との見通しを示していた。その後、サウジアラビアを訪問し、20~21日に来日。広島の先進7か国首脳会議(G7サミット)に出席し、日米欧各国首脳に長期支援を求めた。
今回の演説で「反転攻勢」という言葉は直接使わなかったが、23日には海兵旅団の新設を発表するなど準備はほぼ完了したとみられる。
ウクライナ軍参謀本部は23日夕以降、戦況の発表で、露国防省が「全域制圧」を宣言したドネツク州の要衝バフムト市内の情勢に言及しなくなった。ウクライナ軍がバフムト市内から移動し、周辺での反撃に軸足を移した可能性がある。
一方、ウクライナと国境を接する露西部ベルゴロド州で、プーチン政権に反対するロシア人武装組織がウクライナ側から進入し、露軍と戦闘になったことに関し、英紙フィナンシャル・タイムズは23日、米国がウクライナに供与した対地雷装甲車2台や軍用車両が使われたと報じた。ロシア人部隊「ロシア義勇軍団」のトップが証言した。
ウクライナ国防省情報総局の当局者は同紙の取材に、プーチン政権に反対するロシア義勇軍団と「自由ロシア軍団」と協力関係にあることを認めたが、進入への直接的な関与は否定した。
米国防総省のパット・ライダー報道官は23日の記者会見で「我々は準軍事組織への装備の移譲は認めていない」と述べ、米軍は無関係との立場を強調した。
敵対勢力の進入を許したことはロシア国内に大きな衝撃を与え、ベルゴロド州知事は23日、国境警備に対する不満を口にした。