[ロンドン 5日 ロイター] – トルコのエルドアン大統領が新内閣の財務相にシムシェキ元財務相を任命したことを海外投資家は歓迎し、危機に瀕する同国経済の方向転換を期待している。 

トルコは根強いインフレに悩まされ、数百億ドルもの外貨準備が消滅するなど厳しい経済状況に直面している。

資産運用会社アムンディのハカン・アクソイ氏は「シムシェキ新財務相が最初に語ったのは、透明性、一貫性、予見可能性、法令順守をもたらすということだった」と指摘し、「政策転換が進むという期待」が高まったと述べた。

しかし、インフレが猛威を振るう中で利下げを実施するなど、何年間も続いた非正統的政策は、財務相1人の起用によって巻き戻せるものではない。度重なる市場の混乱で何度も火傷を負った投資家の信頼を回復することも、今回の人事だけでは難しい。

今後の金融政策の軌道はまだはっきりしない。エルドアン氏は数日中に中央銀行の新総裁も任命する見通しだ。22日には次回の金融政策決定会合が控えている。

トルコのインフレ率は40%弱で、政策金利は8.5%。経済規模の大きい世界の国々の中で、実質金利は最低だ。一方、通貨リラを細かく管理してきたことで、数百億ドルの外貨準備が吹き飛んだ。

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銀行に低金利融資を奨励する政策と併せ、「エルドノミクス」と呼ばれるこの経済政策を嫌って、大半の海外投資家はトルコから逃げ出した。財務相は、後に残った複雑な経済情勢を解きほぐす仕事を担うことになる。

中銀新総裁には、米国で金融機関幹部として経験を積んだハフィゼ・ガイ・エルカン氏の起用が取りざたされている。このため中銀が利上げを行うとの信頼感が高まった。

「高金利の敵」を自称するエルドアン氏がシムシェキ財務相と中銀に政策運営の判断を任せるかどうかを、投資家は見極めることになる。その政策が経済に余波を広げ、短期的な痛みをもたらし始めたとしてもだ。トルコ中銀の総裁は、4年間で3回入れ替わっている。

資産運用会社イースト・キャピタルのエムレ・アカクマク氏は「長期の戦略的投資家は、そう簡単には戻ってこないだろう。数年とは言わないまでも、数カ月かかる」と予想。「海外投資家は、経済担当の要人が頻繁に交代した苦い経験を味わっているからだ」と語った。

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トルコは、通貨リラ建ての預金が目減りしないよう外貨換算の価値で保証する預金保護策を採っており、新たな経済閣僚や中銀総裁はこの問題とも格闘しなければならない。こうした預金は同国の全預金の4分の1ほどを占める。

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今のところ、財政政策については良い兆しがうかがえる。シムシェキ氏は4日、トルコは経済の予見可能性を確保するため、「合理的な立脚点」に立ち戻るほか選択肢は無いと述べた。

リラが大統領選以来8%以上下落して5月31日に1ドル=21.8リラの過去最安値を付けたことも注目点だ。投資家はこれを、政府が為替管理の手綱を緩めていることを示す前向きなサインだと受け止めている。

大統領選前、リラが0.25%以上動いたのは昨年11月初旬以来でほんの数日しかなかった。

ただユニオン・バンケール・プリベのシニア新興国市場ファンドマネジャー、ラミネ・ブゲルア氏は、「トルコリラは魅力的と言うには程遠い」とし、あと20%は下落しないと投資を検討したくもないと語る。「何が必要かは誰でも知っている。金融政策を修復することだ」とブゲルア氏は続けた。

(Karin Strohecker記者、Libby George記者)