【ワシントン時事】米証券取引委員会(SEC)が、暗号資産(仮想通貨)業者への締め付けを強めている。今月に入り、証券法などに違反したとして、交換業大手のコインベース・グローバルとバイナンスを相次いで提訴した。ただ、暗号資産への法規制が不明瞭なままの摘発に、業界は猛反発している。米議会では、新たな法整備への動きも出ている。
「ドルも、ユーロも、円もデジタルで取引されている。これ以上、デジタル通貨は必要ない」。SECのゲンスラー委員長は、暗号資産交換業大手2社の提訴後、米CNBCテレビに出演し、厳しい見方を示した。「業界の事業モデルは、証券法を順守しないことで成り立っている」と切り捨てた。
SECは、バイナンスとコインベースが、暗号資産を「有価証券」として届け出ないまま、取引を仲介していたと指摘。「証券取引所」としての登録も怠っていたと強調した。バイナンスを巡っては顧客資産の流用などの疑いも浮上。SECは資産凍結を申し立てた。
米国では、暗号資産に絞った法規制は整備されていないため、SECは証券法などを適用して提訴。伝統的な金融機関や証券取引所と同様の規制を受けるべきだと主張している。
しかし、バイナンスは「暗号資産を『証券』と一方的に見なすのは、問題を複雑にする」と争う構えだ。「効果的な規制の枠組みには、協力的で透明性が高く、慎重な政策が求められるが、SECはそれを放棄した」と非難している。
当局と業界の対立が続く中、米議会では、共和党のマクヘンリー下院金融サービス委員長らが、交換業者などの登録制を導入し、暗号資産の性質に応じて当局の監督下に置く法案を準備。ルール整備の動きに、業界の一部で評価する声も上がっている。
ただ、報道によると民主党の支持は得られていないようで、上下両院の多数派が異なるねじれ議会の中、先行きは見通せない。イエレン財務長官は、米テレビで「追加規制は適切だ。法案が議会を通過するよう協力したい」と話した。