少子化対策の強化に向けた「こども未来戦略方針」を決定したことを受けて岸田総理大臣が、記者会見し、所得制限の撤廃などの児童手当の拡充策を来年10月分から実施するほか、2026年度から出産費用の保険適用を始める方針を明らかにしました。

一方、財源の確保にあたっては、国民に実質的な追加負担が生じないよう歳出改革を徹底すると強調しました。

岸田総理大臣は、記者会見の冒頭「未婚率の上昇、出生率低下の大きな要因は、若い世代の所得の問題だ。所得を伸ばし、若い世代の誰もが『結婚やこどもを生み育てたい』という希望がかなえられるよう、将来に明るい希望をもてる社会をつくらない限り、少子化トレンドを反転することはかなわない」と指摘しました。

そして、今回の戦略方針は、長年、指摘されながら実現できなかった経済的支援の拡充を思い切って実現するものだとして経済成長への取り組みとあわせて少子化対策の強化を図ることで、若者や子育て世代の所得の向上に全力を注ぐと決意を示しました。

また今後3年間で日本の子ども・子育て予算は、こども1人あたりの家族関係支出で見て国際的にもトップ水準となり、画期的に前進すると強調しました。

さらに、こども家庭庁予算も5割以上増加すると説明し、2030年代初めまでに倍増を目指す考えを重ねて示しました。

“来年10月分から児童手当拡充”

そして経済的支援の柱の1つとなる児童手当について、所得制限の撤廃や高校生までの支給対象の拡大、それに第3子以降の3万円への増額といった拡充策を来年10月分から実施する方針を明らかにしました。

“2026年度から出産費用 保険適用”

また、出産費用の保険適用などの出産支援について、2026年度から開始する方針も表明しました。

“育児休業給付の給付率を引き上げ”

一方、社会全体の構造や意識を変えることも重要だとして、両親ともに、産後の一定期間に育休を取得した場合、手取りの収入が変わらないよう育児休業給付の給付率を引き上げることなどを説明しました。

そして「日本の社会は子育てに必ずしも温かくないと言われる。社会の意識を改革し、社会全体で子育て世帯を応援する社会を皆さんとともにつくっていきたい」と呼びかけました。

“財源確保 歳出改革などによって確保”

一方、少子化対策を実行するための財源について「財源確保にあたっても、経済成長を阻害し、若者・子育て世代の所得を減らすことがないよう、まずは徹底した歳出改革などによって確保することを原則とする」と強調しました。

その上で歳出改革などの取り組みを徹底することによって、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す方針に揺るぎはなく、財源の具体化を先送りしたとの指摘はあたらないと反論しました。

そして、13日決定した「こども未来戦略方針」のさらなる具体化の検討を進め、必要な制度改革の法案を国会に提出する考えを示しました。

最後に、若い世代の人口の急激な減少が始まるとされる2030年までが少子化の傾向を反転させるラストチャンスだと重ねて指摘し「不退転の決意をもって、経済成長と少子化対策を『車の両輪』として、スピード感を持って実行していく」と決意を強調しました。

“衆院解散 情勢よく見極める”

衆議院を解散するかどうかについて、岸田総理大臣は、記者会見で、来週21日の国会の会期末にかけての情勢を見極めて判断する認識を示しました。

この中で、岸田総理大臣は、今の国会の会期中に衆議院を解散する考えがあるか問われたのに対し「岸田政権は外交、内政の両面で先送りされてきた困難な課題のひとつひとつに答えを出していくことが使命だと覚悟し、政権運営をしてきた。解散も、この基本姿勢に照らして、いつが適切か諸般の情勢を総合的に判断していく考え方だ」と述べました。

その上で「今の通常国会の会期末の間近になって、いろいろな動きがあることは見込まれる。情勢をよく見極めたいと考えている。現時点ではそれ以上のことを答えることは控えたい」と述べました。

“ことし秋までに マイナンバーカード総点検”

マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次いでいることを受け、岸田総理大臣は、記者会見で、ことし秋までに、マイナンバーに関連するデータやシステムの総点検を行うとともに、再発防止に向けた仕組みの構築を進める方針を明らかにしました。

この中で岸田総理大臣は「マイナンバーカードの普及が進む中で、誤り事案が指摘されている。政府としては、全ての事案を重く受け止め、個人情報の保護と国民の信頼確保が、マイナンバーカード普及の大前提であることを、今一度、肝に銘じて、対応していく」と述べました。その上で、ことし秋までに、マイナンバーに関連するデータやシステムの総点検を行うとともに、システム改修を伴わずに行うことができる再発防止の仕組みの構築を進める方針を明らかにしました。

また、来年秋にいまの保険証が廃止され、マイナンバーカードと一体化されることに関連し、すでに発行済みの保険証については、経過措置として最大で再来年の秋まで使用できることを丁寧に説明していくなど、着実な移行に万全を期す考えを示しました。

“追加負担とならないこと目指す”

岸田総理大臣は、記者会見で「少子化対策の実施にあたって経済成長を阻害し、若者・子育て世帯の所得を減らすことがないよう、徹底した歳出改革などによって、公費の節減や保険料の上昇を抑制することで、実質的な追加負担とならないことを目指す」と述べました。

“日朝首脳会談 早期に実現を”

岸田総理大臣は、記者会見で「日朝間の懸案を解決し、両者がともに新しい時代を切り開いていくという観点からの私の決意をあらゆる機会を逃さずに、キム・ジョンウン総書記に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べました。

“LGBT 幅広い合意得られること期待”

岸田総理大臣は記者会見で、LGBTの人たちへの理解増進に向けた議員立法について「国会で議論されているさなかに政府の立場から内容について評価することは控えなければならない」と述べました。

その上で「引き続きできるだけ幅広い合意が得られることを期待したい。政府としては、多様性が尊重され、すべての人々が互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる社会の実現に向け、さまざまな国民の声を受け止めてしっかり取り組んでいく」と述べました。

一方、同性婚の法制化については「制度を法律として作ることになると、幅広い国民の皆さんにさまざまな影響が出てくるという課題もある。司法の動きなどを踏まえ、国民や政治の中でどういった議論が進むのかを注視しながら、多くの国民の声を聴き、政府としても責任を果たしていきたい」と述べました。