[東京 15日 ロイター] – トヨタ自動車が14日に開催した定時株主総会で、会社側が提示した取締役選任議案に対して豊田章男会長への賛成票比率は84.57%だった。2022年の95.58%から11ポイント低下した。有力な議決権行使助言会社が反対を推奨し、事前に欧米の機関投資家が反対票を投じていたことから注目されていた

同社が関東財務局に15日提出した臨時報告書で明らかになった。豊田氏への賛成票比率は過去5年間、約95―98%で推移。今年は例年と比べ10ポイント以上減ったことになる。

SBI証券の遠藤功治企業調査部長は賛成票が低下したことについて、一部の投資家には「ガバナンス(企業統治)が大きな問題」と映っているとし、「日本人からみると別に問題はないが、欧米の一部機関投資家からはあまりクリアでなく、透明性がないという風にみえている」と述べた。

豊田氏の取締役選任を巡っては、一部の海外機関投資家が「取締役会の独立性が不十分」だとして同氏を含む取締役候補者の多くの選任に反対。株主の投票行動に影響力のある米議決権行使助言会社グラスルイスも、その責任を負う取締役会議長としての豊田会長の選任に反対を推奨していた。

トヨタ側は、東京証券取引所の3分の1以上とする独立性基準を満たし、新任取締役の独立性も「東証から承認を得ている」と反論。指摘されるような「客観性・独立性・適切な監督を行う能力の懸念」はないとしていた。

豊田会長を取締役候補とした理由についても「長期的な視点のもと競争力を強化してきた」とした上で、「モビリティカンパニーへの変革を強力に推進することで、引き続き当社の企業価値向上に寄与できると判断した」と説明していた。

<株主提案への賛成票比率は15%>

一方、欧州の資産運用3社が提出した株主提案への賛成比率は15.06%だった。3社はトヨタの気候変動対策について、情報開示が不十分だとし渉外活動の年次報告書を作成を義務付ける定款の規定追加をトヨタに求めていた。18年ぶりに提出された株主提案で、かつ環境関連の内容で関心を集めたが、3分の2以上の賛成を得られず否決された。

トヨタ側は、情報開示は適時に変化させる必要があり、会社の組織・運営の基本事項を定める定款の規定にはそぐわないことなどを理由に反対していた。

株主提案を出したデンマークの年金基金アカデミカーペンション、ノルウェーのストアブランドアセットマネジメント、オランダのAPGアセットマネジメントは15日、「多くの投資家が(株主提案を)支持してくれたことを嬉しく思う」とのコメントを共同で出した。

3社は提案の目的について「長期的な株主価値を守り、レピュテーションリスクを低減」し、取引先なども含めて温室効果ガス排出量をゼロにする「ネットゼロ」達成と長期的な事業継続のためと説明。「われわれは今後も積極的に関与し、トヨタを支援する」とした。