[東京 4日 ロイター] – 国際原子力機関(IAEA)は4日、東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出を巡る日本政府の計画について「国際的な安全基準と合致している」との報告書を発表した。放射能が人体と環境に与える影響はわずかとしている。
来日中のグロッシIAEA事務局長はこの日午後、岸田文雄首相に同報告書を手渡した。IAEAは事故直後から同原発の処理に関わっており、グロッシ氏は岸田首相に対し、「重要なマイルストーンを迎えていると考えている」と述べた。
グロッシ氏は5日に福島県を訪れ、地元の漁業関係者などに会う。7日からは韓国を訪問し、報告書の内容を説明する。同氏は岸田首相との会談で、「国際社会、日本、地元のみなさんに安心を与えていくために協力し、今後行われるすべての活動が環境に悪影響がないと示していかないといけないと考えている」と語った。
日本政府は放出時期を「今年春から夏ごろ」としており、岸田首相は受け取った報告書の内容を踏まえて判断する。岸田氏はグロッシ氏に対し、「引き続き科学的根拠に基づいて、高い透明性を持って、国内外に丁寧に説明したい」と語った。
その後に都内で会見したグロッシ氏は、「処理水放出は国際基準に適合しており、海水・魚・堆積物への影響はごくわずかと言える」と述べた。放出を監視するため福島の現地にIAEAの職員を常駐させ、今後数十年にわたってモニターするとした。
日本政府は2021年、福島第一原発の処理水を海へ放出することを決め、計画の安全性に関する包括的な検証をIAEAに求めた。IAEAは現地に調査団を派遣するなどし、すでに安全性を評価、最終的な取りまとめを続けてきた。
処理水は福島第一原発にたまった水からトリチウム以外の放射性物質を取り除いたもの。日本政府と東電は、海水で希釈してから海底トンネルを通じて沖合に放出することにしている。
地元の福島をはじめ全国の漁業団体は放出に反対の姿勢を変えておらず、周辺国の一部も懸念している。中国国営中央テレビによると、在日中国大使館は4日、IAEAの報告書が汚染水を海洋に放出する「許可証」であってはならないと反対の立場を改めて表明した。
グロッシ氏は会見で、中国など多くの国が放射性物質を含んだ水を放出していると説明した。
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