[マドリード/ベルリン 24日 ロイター] – 23日のスペイン総選挙で極右政党ボックス(VOX)は議席を減らし、フランコ独裁体制以来となる強硬右派政党の政権入りがひとまず回避された。欧州の極右勢力が主流派を目指すことの限界を示す結果となった。 

事前の世論調査では中道右派野党の国民党(PP)が勝利し、ボックスが政権成立の鍵を握ることが予想されていたが、両党が連立を組んでも過半数には届かない結果となった。

反移民や反フェミニズムを主張するボックスは選挙戦で、イタリアのメローニ首相やハンガリーのオルバン首相など右派の外国首脳の支持を受けた。しかし結果は、議席数を52から33に減らした。

ユーラシア・グループの欧州担当マネジングディレクター、ムジタバ・ラーマン氏は「スペイン国民全員にとって最重要な問題は生活コスト関連だったが、ボックスの戦略はアイデンティティーの問題に焦点を置いた」と指摘。

「LGBT(性的少数者)の権利や移民、カタルーニャ州独立に反対する立場はボックスが予想したような好結果をもたらさなかった」とした。

<欧州極右化は行き過ぎた懸念>

ユーロ圏の4大経済大国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)では生活費高騰の危機で既成政治への不満が募り、グリーン化のコスト上昇にも反発が強まる中、右派ポピュリズムの人気が上昇している。

ただ、イタリアで第2次世界大戦後最も右派的な連立政権を昨年発足させたメローニ首相は、反移民の強硬な発言を軟化させている。

フランスの極右政党、国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏も同性婚禁止の公約を撤回するなど、幾つかの社会問題に対する姿勢を軟化させている。

ラーマン氏は「欧州極右化というシナリオは行き過ぎた懸念だ」と指摘した。

それでもなお、欧州の複数の国で極右勢力は根強い人気がある。

ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は先月、初めて地区レベルの首長選挙で勝利し、同国東部で今後行われる3つの州選挙で勝利する勢いだ。

スペインの選挙ではボックスが一部の有権者を取り込み政権入りする可能性が浮上したことで、その他の一部有権者が左派の主流派に固執する結果となった。

ある有権者は「私はフランコ体制を経験したし、父は当時刑務所に入れられた。PPを支持することも考えたが、ボックスがいるのでそれはできない」と話した。

(David Latona記者・Maria Martinez記者・Matthias Williams記者)