【岸田総理冒頭発言】

 本日、内閣改造を行いました。

 2021年10月4日に総理大臣に就任した際、私の内閣は、新しい時代を国民の皆様と共に創っていく「新時代共創内閣」であると申し上げました。この2年間は、正に国民の声を丁寧に聴き、国民の皆様と協力しながら新しい時代の扉を開いていく、そうした取組を進める毎日でした。

 まずは新型コロナとの闘い。平時の日本を取り戻すため、段階的に政策の見直しを進めてきました。改めて、国民の皆様の御理解と御協力に感謝を申し上げます。

 2022年2月には、ロシアがウクライナに侵攻し、国際的な物価高が進みました。政府として、物価高に対する総合的な対策を進めるとともに、民間企業の皆様には、物価高に負けない高い水準の賃上げをお願いしました。今年の春闘の賃上げ率は3.58パーセントと30年ぶりの高い水準となり、また、最低賃金についても過去最高の引上げとなり、全国加重平均で1,004円となりました。

 経済政策では、官民が協力しながら、脱炭素化やデジタル化などの国内投資を拡大しながら、成長と分配の好循環を実現する新しい資本主義の取組を進めてきました。産業界の見通しによれば、今年は設備投資が100兆円を超え、過去最高になる見通しです。

 エネルギー・環境政策も大きくかじを切りました。国際エネルギー危機とも言われる中で、エネルギーの安定供給と脱炭素を両立させて日本国民の生活を守り、同時に、経済成長のエンジンをつくる。カーボンプライシング制度や脱炭素電源のフル活用に向けた枠組みを整備しました。

 外交面では、ロシアによるウクライナ侵略により、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が危機に瀕(ひん)しています。東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、北朝鮮による核・ミサイルの脅威も増大しています。国民の安全とその生活を守り抜くため、防衛力の抜本的強化に踏み出す決断もいたしました。

 さらに、これを背景に、我が国の外交力を一層高めるべく、首脳外交にも全力で取り組んでいます。例えば今年5月には、G7広島サミットを開催し、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、G7諸国が一致団結して取り組む方針を確認いたしました。また、8月には、キャンプ・デービッドで日米韓首脳会議を開催し、3か国のパートナーシップの新時代を拓いていくという決意を内外に示しました。

 このように、この2年間を通じて、新しい時代の息吹が確実に生まれつつあります。経済でも外交でも、世界における日本の存在感を高めることができました。

 しかしながら、まだ道は半ばです。なぜならば、我々の前に流れている変化の大河は、正に百年に一回とも言える、時代を画するものだからです。

 グローバルサウスの発展を始め、国際社会のパワーバランスは劇的に変化しています。AI(人工知能)の進展など技術の変化は加速度を増しています。脱炭素経済への移行を始め、世界の経済を取り巻く状況も急速に変化しつつあります。この変化の大河を乗り越え、我が国の安心と豊かさを次の世代にバトンタッチする。目の前の変化を前にして立ち止まることは許されません。変化を力にする日本、目の前に広がる大きな変化を新しいチャンスに変えていく。雇用者のリ・スキリング、スタートアップ企業の支援、デジタルの力を活用した地方の成長、脱炭素技術をいかした新しい産業づくり、こども・子育て政策の充実。変化をチャンスとして力に変えていくため、政府は総力を挙げてまいります。

 国際情勢の変動にもたじろいではいられません。我が国こそが、成長するインド太平洋の安定軸となり、そして世界をリードする。世界の多くの国は、そうした役割を日本に求めています。日本の存在感を世界に示し、平和と国際協調へのリーダーシップによって敬意を集めていきます。

 この内閣は、「変化を力にする内閣」です。

 明治維新、戦後復興など、我が国はこれまでも変化をチャンスとし、チャンスを力にしてきた、こうした歴史があります。大きな変化を前に、当時はとても実現不可能と思われた経済成長や豊かな社会づくりを実現した歴史が我々にはあります。変化を力として、閉塞感を打破し、所得であれ、暮らし・福祉であれ、外交関係であれ、明日は今日より良くなる、誰もがそう思える国づくりを一緒に行っていこうではありませんか。

 こうした国づくりに向け、引き続き、経済、社会、外交・安全保障の3つを政策の柱として、強固な実行力を持った閣僚を起用することといたしました。

 政府の大黒柱として、松野官房長官には留任いただきます。また、政権の最重要課題である拉致問題についても、引き続き担当してもらいます。

 まず、第1の柱は経済です。成長と分配の好循環を実現するため、バブル崩壊以降30年間続いてきた減量経済、コストカット経済を脱却し、賃上げ、人への投資の促進、研究開発投資、これらを強化するといった攻めの経済への転換が少しずつ動き始めています。この動きを着実なものとするため、まずは足元の物価高に対応しなければなりません。

 ガソリン補助金の継続を含め、国民生活を応援する大胆な経済政策を実行してまいります。若い世代の所得向上のため、年収の壁を打ち壊していきます。そのための支援強化策を早急に取りまとめ、時給1,000円超えの最低賃金が動き出す来月から早速実行いたします。

 その上で、新しい資本主義に向けた取組を加速し、物価上昇率プラス数パーセントの賃上げを継続的に実現するための政策や、官民連携により150兆円規模の投資を誘引するための取組、さらにはAIやスタートアップなど、将来の成長基盤の整備を進め、デフレからの脱却を確実なものとしてまいります。これまでのデフレ下で税収が伸び悩む中での財政から、経済運営においてより中長期をにらむ、ダイナミックで積極的な役割を果たせる財政へと転換してまいります。

 スタートダッシュが求められる経済対策をにらみ、鈴木俊一財務大臣と西村康稔経済産業大臣には引き続き重責を担っていただくこととしました。

 経済対策全体の取りまとめは、ベテランで調整能力に定評のある新藤義孝大臣にお願いしました。

 経済安全保障や科学技術など、明日の日本の将来を決する重要分野は、高市早苗大臣に引き続き担当いただきます。

 第2の柱である社会については、2030年までが少子化トレンドを反転させるラストチャンスであり、まずは、先般閣議決定したこども未来戦略方針に基づき、次元の異なる少子化対策を早期に実施すべく、必要な制度改革の法案を次期通常国会に提出してまいります。

 少子化以外にも、これ以上先送りができない、待ったなしの社会的課題があります。そうした課題への対応を強化してまいります。

 例えば、高齢化によって認知症の患者が増える中で、認知症の方が尊厳、希望を持って暮らすことができる社会をつくることが喫緊の課題です。また、身寄りのない方も含めて、高齢者の方々がお一人でも安心して年を重ねることができる社会づくりを政府横断的な取組として進めてまいります。さらに、多くの国民の方々が身体的負担、通院負担で苦しまれている、国民病とも言える花粉症についても、抜本的な対策が必要です。厚生労働大臣には、厚生労働分野に長く関わり、国際人脈も豊富な武見敬三さんにお願いしました。

 こども・子育て政策や女性活躍は、こども・子育ての当事者でもある加藤鮎子さんに担当してもらいます。

 土屋品子復興大臣には、女性ならではの視点を最大限にいかし、被災地に寄り添った復興策に腕を振るってもらいます。

 沖縄・北方対策、地方創生、消費者政策、万博(国際博覧会)担当では、自見はなこ大臣の活躍を期待しています。

 コロナのときのデジタル敗戦は二度と繰り返さない。デジタルを力として地方経済の成長を図り、同時に、利用者目線を第一に据えて、国と地方の行財政の仕組みを変えていく。このために、デジタル田園都市、行革、規制改革などを束ねる司令塔として「デジタル行財政改革会議」を新たに設置いたします。この改革の司令塔は河野太郎大臣にお願いしました。持ち前の突破力に期待しています。

 第3の柱である外交・安全保障に関しては、G7、QUAD(日米豪印4か国)、日米韓など様々な枠組みを活用しながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化に向けて取り組んでまいります。我が国自身の防衛力の抜本的強化について、着実に進めていきます。その上で、我が国の置かれた厳しい安全保障環境に対応するため、唯一の同盟国である米国との関係を一層強化するとともに、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、さらにはインドなどの同志国と連携強化を進めてまいります。特に韓国との間では、尹(ユン)大統領との個人的信頼関係をてこに、幅広い日韓の連携を進めるとともに、日米韓の連携も強化してまいります。そして、年末の日ASEAN(東南アジア諸国連合)特別首脳会談に向けて、我が国が、世界の成長セクターであるインド太平洋を牽引(けんいん)していきます。

 外交の要には、国際人脈が豊富で、閣僚としても経験豊富な上川陽子さんに外務大臣をお願いしました。

 防衛大臣には、この分野のエキスパートでもあり、政策全般に明るい木原稔さんを起用いたします。

 今、申し上げたような三本柱の重点課題を内閣一体となって進めていくためにも、各分野における安定した行政運営が不可欠です。NTT(日本電信電話株式会社)の在り方の検討やマイナンバーカードに対する国民の信頼回復を始め、幅広い担当を持つ総務大臣には、この分野に精通している鈴木淳司さんを起用いたします。

 法務大臣は、ベテランの小泉龍司さんにお願いすることとします。国民に身近で頼りがいのある司法の実現に向けて尽力してもらいます。
 文部科学大臣には、行政経験豊富な盛山正仁さんを起用いたします。旧統一教会問題についても、関係大臣と協力して、被害者に寄り添い、法の厳正な適用に万全を尽くしてもらいます。
 食料安全保障の強化に取り組む農林水産大臣は、農林水産行政に精通した宮下一郎さんにお願いいたします。
 地球温暖化対策に取り組む環境大臣には、国会で環境問題に長く取り組んできた伊藤信太郎さんにお願いいたします。

 国土交通大臣は、災害対応、物流問題、地域交通など地域社会の重要課題に、引き続き斉藤鉄夫大臣に取り組んでもらいます。

 国家公安(委員会)委員長兼防災担当大臣は、産業の実態に詳しく、防災に知見の深い松村祥史さんを起用いたします。

 最後に、旧統一教会について一言申し上げます。9月7日、旧統一教会に対する過料の通知を行いましたが、これまで7回にわたる報告徴収の実施とともに、全国弁護団、元信者の方々など、数多くの方々からの証拠収集も着実に進んでいます。この問題にしっかりとした結論を出すべく、最終の努力を進めてまいります。宗教法人審議会の意見も伺いながら、法に基づき、最終的に判断をしてまいります。政府・与党が力を合わせ、先送りできない課題に正面から取り組んでまいります。

 国民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、これからプレスの皆様より御質問いただきます。質問される方は挙手の上、指名を受けてからお近くのスタンドマイクにお進みいただき、社名とお名前を明らかにしていただいた上で1人1問、御質問をお願いいたします。
 まず、幹事社から御質問いただきます。共同の中久木さん。

(記者)
 共同通信の中久木です。よろしくお願いします。
 総理は冒頭で、第1の柱として経済について挙げられましたけれども、先日、インドで開いた記者会見で、新体制で経済対策の策定に取り組むお考えを示されましたが、これをどのくらいの時期に策定するお考えなのでしょうか。また、裏付けとなる補正予算を編成するお考えがあるのかどうか、あるいは臨時国会を開くお考えがあるのかどうか、時期も含めてよろしくお願いします。
 あわせて、衆議院議員の任期が間もなく折り返しを迎えますが、衆議院解散の是非について、お考えを併せてお願いします。

(岸田総理)
 まず、御質問の経済対策については、新しい体制で必要な予算に裏打ちされた思い切った内容の経済対策をつくり、早急に実行していくこと、これを最優先にしていきたいと思います。

 具体的には、月内には閣僚に対して経済対策の柱立ての指示を行います。そして、与党とも連携し、物価高から国民生活を守るための対策、また、物価高に負けない構造的な賃上げと投資拡大の流れを強化する取組、また、人口減少を乗り越えるための社会変革を起動する。それには災害対策を含めて国民の安全・安心を確保する。こうした考え方に立って、来月中をめどに取りまとめを目指してまいります。

 そして、御質問の補正予算についてですが、補正予算の編成については、今、申し上げた経済対策の取りまとめを行った後、その内容を踏まえて、しかるべき時期に指示を行いたいと思っています。

 そして、それ以外の政治スケジュールについても御質問がありましたが、それらについては、今はまず思い切った経済対策をつくり、早急に実行していくことを最優先に日程を検討してまいります。現時点では、これ以上申し上げることはございません。
 以上です。

(内閣広報官)
 続きまして、幹事社の東京新聞、大杉さん。

(記者)
 幹事社の東京新聞の大杉と申します。
 防衛政策の関連で伺いたいのですけれども、この6月の骨太方針で、25年以降も可能とされた防衛増税の実施時期なのですけれども、まだこれは決まっていないので、年末の税調などで時期を明確にするお考えがあるのかというのがまず一点で、あと、その防衛増税とはちょっと違うのですけれども、防衛装備移転三原則の見直しについても、今、与党でずっと議論してはおりますが、防衛装備移転三原則とその運用指針について、どういった見直しをいつまでにする必要があるというふうに、現在、総理、お考えになっているかをお聞かせ願えますか。

(岸田総理)
 まず1つ目の防衛力強化に向けた税制措置の実施時期についてですが、昨年末に閣議決定した枠組み、そして本年の骨太の方針の中で、行財政改革を含めた財源調達の見通し、これをしっかり考え、景気や賃上げの動向、そして、それに対する政府の対応、これらを踏まえて判断するとされています。今、正に政府・与党でこうした観点から、様々な議論も行われているところです。ですから、引き続き政府・与党で緊密にこうした議論を通じて連携して、具体的な時期について判断していかなければならないと思います。ですから、今申し上げたような議論、これをしっかりと見極めた上で、時期等についても判断していくことになります。今、議論の最中でありますので、今この時点で、いつということは申し上げるべきではないと思います。

 それから、防衛装備品の方の話ですが、我が国としてまとめた国家安全保障戦略の中で、防衛装備品の海外の移転については、インド太平洋地域の平和と安定のために我が国にとって好ましい安全保障環境を創出する、さらには国際法に違反する侵略を受けている国への支援、こういったもののために重要な政策手段であると位置付けられています。今、正にこういった観点から、今後どういった形で制度の見直しを行うべきなのか、これを与党のワーキングチームで議論していただいています。お盆明けに議論を再開してもらい、今、正に議論が始まったところです。議論が始まったところですから、いつまでという具体的なことはまだ申し上げることはできませんが、国際情勢の変化の中で、我が国としても適切にこの問題についても判断をしていかなければなりません。国際情勢の変化も見据えながら、このワーキングチームの議論を進めていただきたいと思いますし、政府も与党としっかり連携しながら、この議論に貢献をしていきたい、このように思っています。

(内閣広報官)
 ここからは幹事社以外の方から御質問をお受けします。御質問を希望される方は挙手をお願いいたします。こちらで指名いたしますので、マイクにお進みください。
 それでは、TBSの川西さん。

(記者)
 TBS、川西です。
 冒頭、総理の御発言の中で三本の柱の話がございました。政策課題として、経済、社会、そして外交・安全保障だったと思います。それぞれの分野につきまして、留任する閣僚の方がいらっしゃると、それは必要だったということで、その御指名があったのですけれども、外交・安全保障についてのみ留任する閣僚がいませんでした。この分野こそ、政策の継続性という意味で必要なのかなと思ったのですけれども、なぜここの分野で留任する大臣がいなかったのか。特に林(前)外務大臣、何でこれを替える必要があったのか。この点、お伺いしたいと思います。

(岸田総理)
 御案内のとおり、外交は、外務大臣あるいは防衛大臣を始めとする閣僚も大きな役割を果たしますが、それと併せて首脳外交というものが大変大きなウエートを占める、このように認識しています。私も長く外務大臣を務める中で、外交のありよう、そして外交における首脳外交の重要性、こういったことも痛感いたしました。私自身、この首脳外交において大きな役割をこれからも果たしていきたいと思います。

 そして、あわせて、こうした外交を支えていただく有能な人材は、自民党の中に多数おられます。もちろん従来の林(前)大臣も大変優秀な、有能な大臣でありましたが、党内における有能な人材にもそれぞれ力を発揮してもらう、こうした体制を組むことも、より外交を前進させていく上で、これは意味があると考えています。

 そういった観点から、こうした経験あるいは分野における知識豊富な上川大臣、あるいは木原大臣にも御努力いただきたいと思いますし、その先頭に立って、私自身も外交をリードしていきたい、このように思っています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、朝日の村松さん。

(記者)
 朝日新聞の村松です。よろしくお願いいたします。
 冒頭、旧統一教会について言及がありました。最終的な判断というのは、ここは明確にお答えいただきたいのですけれども、解散命令請求に踏み切るという理解でよろしいのかどうか、1点確認させてください。

 一方で、解散命令請求を視野に入れながら、今回の内閣改造では、新閣僚の中に教団との接点を持つ方がいらっしゃいます。どのような基準で今回閣僚を任命したのか、なぜそういう接点を持つ人を閣僚に任命したのか、これについてお教えください。

(岸田総理)
 まず、前半の方の質問については、先ほど申し上げましたが、法に基づいてこの手続を進めていきます。法律に照らして解散命令請求等を行えるかどうか、これをしっかり判断した上で手続を進めていく、これが取りあえず当面の手続の流れの最終的な判断ということなのだと思います。これは引き続きしっかりと法に照らして判断をしていくべき課題であると思っています。

 そして、統一教会との関係のある大臣について御質問がありましたが、まず基本は、大臣は適材適所で任命したものでありますが、統一教会の関係については、自民党において、昨年、統一教会との過去の関係、これを8項目に分けて詳細に点検、報告し、そして厳正な見直しを行ったところであります。そして、旧統一教会及びその関連団体と一切関係を持たない、この方針であることを踏まえてガバナンスコードを改訂し、そして当該方針に向けて全国に通知し、徹底させた。こういったことであります。

 したがって、各閣僚においては、過去の関係いかんにかかわらず、現在は当該団体との関係を一切有していないということを前提として任命を行っている、こういった次第であります。

 取りあえず御質問はその2つだと思います。

(内閣広報官)
 それでは、次の質問、南日本の髙田さん。

(記者)
 南日本新聞社の髙田といいます。
 拉致問題についてお伺いします。総理は、日朝首脳会談の実現に向けて前向きな姿勢を見せられておりまして、今年の夏には曽我ひとみさんとも面会されるなど、積極的な姿勢を見せられております。鹿児島で起きた吹上浜の事件も今年8月、45年を迎えて、家族の高齢化等も久しく言われております。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮とどのように向き合っていくのか。また、交渉の成果等、その一端でも教えてください。

(岸田総理)
 拉致問題については、従来から申し上げるところとして、日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代を切り拓いていくという観点からの私の決意を、あらゆる機会を逃さず金正恩(キム・ジョンウン)委員長に伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄でハイレベルの協議を進めていきたい、このように申し上げています。そのために、様々なルートを通じて様々な働きかけ、これは絶えず行い続けています。ただ、その具体的な結果に至るまで、今の段階でその中身をお話しするということは、これは交渉に影響を及ぼすおそれもありますので、これは控えなければならないと思います。

 しかし、拉致被害者の方、そして、被害者家族の方々の高齢化を考えますときに、この問題は時間的制約のある、ひとときもゆるがせにできない人権問題であるということ、これを改めて強く感じます。こうした危機感をしっかり共有しながら、今、申し上げてきた努力を引き続き続ける、私直轄でのハイレベルの協議を模索する、こうした努力を続けていきたいと思っています。
 今、現状、この場でお答えできるのは以上であります。

(内閣広報官)
 それでは、次は、NHKの清水さん。

(記者)
 NHKの清水です。よろしくお願いします。
 憲法改正について伺います。総理は6月の会見でも、来年9月までの総裁任期中の憲法改正を目指す考えを示されていました。この考えに変わりはないでしょうか。変わらないのであれば、どのような日程感、中身で議論を進めていく考えでしょうか。

 また、内閣改造に合わせて自民党の人事も行われていますが、改正の実現に向けて体制を強化する考えはありますでしょうか。お願いします。

(岸田総理)
 憲法改正を実現したいという思いは、いささかも変わっておりません。そして、例えば自民党が示している4項目を始め、憲法改正という問題は極めて現代的な喫緊の課題でもあるということを考えますときに、できるだけこの取組を前に進めるべく努力をしていかなければならない、強く感じています。

 内閣総理大臣の立場から憲法改正について、内容ですとか、具体的な時期について申し上げるのは控えなければならないと従来から申し上げてきておりますが、今、申し上げた問題意識を持って議論を進めていくことが重要であると思い、そして、特に憲法改正は、御案内のとおり、日本の法典の中で唯一、国民投票が位置付けられている法典であります。最終的には国民が判断をするわけでありますが、その前提として、国会が発議をしなければならないことになっています。先の国会でも衆参の憲法審査会において活発な議論を頂いたと承知していますが、こうした国会での手続を進める上で、まずは国会での憲法審査会での議論等を活発化していただくことを期待したいと思います。

 そして、それに向けての一つの思いや決意として、憲法改正の議論を進めるための布陣、これを強化することはしっかり考えたいと思います。国会での議論ももちろんですし、自民党における議論においても布陣を強化することによって、こうした取組に対する覚悟を示させていただきたい、このように思っています。

(内閣広報官)
 それでは、ニッポン放送の畑中さん。

(記者)
 ニッポン放送、畑中と申します。今回はありがとうございます。
 原発処理水の件について伺います。処理水放出を受けて中国側が水産物の輸入停止措置をしておりまして、当面解除する雰囲気はないようなのですけれども、日本政府として、とりわけ外務大臣も歴任しております総理大臣として、更なる打開策をお考えなのかをお聞きしたいと思います。

(岸田総理)
 御質問のALPS(多核種除去設備)処理水については、まずは、IAEA(国際原子力機関)とも連携し、そして、IAEAにしっかり関与してもらいながら、科学的根拠に基づいて高い透明性をもって丁寧に説明を行い、理解を求めていく、こうした方針を従来から徹底してまいりました。こうした取組によって、多くの国々から我が国の立場に対する理解等が示されていると承知しております。

 その中で、中国との関係においても、先日のASEAN関連首脳会議等において、中国の李強首相に対して、私の方から、我が国の立場を直接伝えさせていただきました。こうした我が国の説明努力についても、中国等に対して引き続き丁寧に行っていかなければならないと思います。二国間あるいは多国間の機会を踏まえ、また、WTO(世界貿易機関)、RCEP(地域的な包括的経済連携)などの通商の枠組みの場、これらも活用しながら、引き続き中国に対し、水産物輸入停止措置即時撤廃を求めていきたいと思います。
 そして、こうした説明や、努力を続ける一方で、我が国の水産業は断固として守り抜かなければなりません。政府として1,007億に上る基金等を活用し、風評対策等、これは万全の対策を採らなければならないと思っておりますし、さらには被害が生じた場合には東電が適切に賠償を行う、こうした枠組みについても説明をさせていただいているわけです。

 ですから、科学的な見地からこの問題について引き続き丁寧な説明を続けるのと併せて、現実の動きに対して、我が国の水産業は断固として守り抜くという対策はしっかりと実施することによって、国民の皆様、そして、水産業関係の皆様方の安心につなげていかなければならない、このように考えております。

(内閣広報官)
 それでは、大変恐縮ですが、この後の日程がございますので、あと2問とさせていただきます。
 では、フジテレビ、瀬島さん。

(記者)
 フジテレビ、瀬島です。よろしくお願いします。
 人事の女性登用についてお伺いします。党役員では骨格を維持する中で、小渕氏を選対(選挙対策)委員長に起用した理由をどのようにお考えでしょうか。
 また、女性閣僚では過去最多に並ぶ5人を起用されましたけれども、自民党の女性議員の数が限られる中で難しい調整もあったかと思うのですが、どういった考えでこれを実現されましたでしょうか。

(岸田総理)
 まず、小渕選対委員長の任命についてですが、小渕優子さんは、自民党ではこれまで政調会長代理、あるいは選挙対策委員長代行、あるいは組織運動本部長、こうした役職を歴任されてこられました。高い実務能力と、そして選挙対策への知見、こうしたものを培ってこられたと思います。是非、こうした能力や知見を十分いかしていただきたい、こういったことで選挙対策委員長をお願いいたしました。

 そして、自民党は、今後10年間で女性議員30パーセントに到達することを目指す、こうした課題を掲げています。女性議員の活躍促進を最重要課題として掲げたところであります。小渕選対委員長には、候補者の発掘あるいはきめ細かい支援など、女性議員3割に向けて、先頭に立って力を振るっていただきたいと思っています。そして、あわせて、選挙の顔の一人としても御活躍いただくことを期待している、こうしたことであります。

 そして、女性閣僚を多く登用したことについての御質問でありますが、飽くまでもこうした人事は適材適所であると思っています。そして、我が党の中に女性議員は少ないのではないかという御指摘がありました。今、申したように、より増やしていかなければいけない、こういった問題意識、課題は我々も認識しているわけですが、しかし、現在活躍している女性議員の皆様も、それぞれ豊富な経験を持ち、優秀な人材、たくさんいるのだと思います。今回、そうした方々の中からできるだけ、先ほど申し上げました経済、社会、そして外交・安全保障、この3つの柱を中心に政策を進めていくために御活躍いただける方を選ばせていただいた、こうしたことであります。是非、それぞれの皆様方に、女性としての、女性ならではの感性や、あるいは共感力、こうしたものも十分発揮していただきながら仕事をしていただくことを期待したいと思っています。
 以上です。

(内閣広報官)
 それでは、読売の足利さん。

(記者)
 読売新聞の足利と申します。よろしくお願いいたします。
 自民党内では、国民民主党を連立政権に加える構想が出ていますけれども、この構想に関する総理のお立場をお聞かせください。

 また、国民民主党の玉木代表は、経済対策を例に挙げて、必要な政策があれば与野党を超えて連携することは否定しないとの考えを示しています。国民民主党との政策協議についてのお考えも併せてお伺いできればと思います。

(岸田総理)
 その点については、まず、今日発足した内閣においても、自民党と公明党の強固な連立を基盤に、先送りできない課題に向けて総力を挙げて取り組んでいきたいと思います。さらには連立ということで申し上げるならば、今月4日に自公の連立、改めて強固にするための合意を行ったところであります。ですので、まずは自公連立の実を上げる、これに集中することが大事だと思います。

 その上で、いろいろな御意見や見方があるとは思いますが、私としては、政府として、いかなる政党であれ、経済対策を始め政策議論、この議論に真摯に対応し、そして、こうした議論を深めた上で、その必要な連携を進めていく、こういった姿勢は大事であると思っています。是非、いかなる政党ともそういった姿勢で、政策を中心に必要な連携を進めていくことは考えられると私も思っております。

(内閣広報官)
 以上をもちまして、本日の記者会見を終了させていただきます。
 大変恐縮ですが、現在、挙手いただいている方につきましては、本日中に1問、報道室担当宛てにメールでお送りください。後日、書面にて回答させていただきます。
 それでは、御協力いただきまして、ありがとうございました。