派閥のパーティー券をめぐる疑惑を受けて岸田総理はきのう、所属する派閥である「宏池会」の会長を辞める方針を明らかにした。このニュースをみて自然と怒りが込み上げてきた。「なんて薄っぺらな人だ」、率直な印象だ。岸田政権は今朝メディアが報じた松野官房長官の“パー券疑惑”で、てんやわんやの大騒動を繰り広げている。落ちるところまで落ちるしかない。政権も自民党ももうダメだろう。そんな中での派閥会長辞任表明。朝日新聞によると岸田総理の周辺では今回の辞任について「派閥の会長を退くことで、党のトップとして信頼回復に努めることが狙いだ」と説明しているという。総理も総理なら周辺も周辺だ。まったくピントがずれている。「そもそも自民党の歴代首相は在任中、派閥を抜ける慣習があった。それは所属したままでは派閥の利益にとらわれてしまい、国家や党全体のリーダーとしてふさわしくないという不文律だった」。

歴代首相は真っ当だった。「首相として憲政史上最長の在任期間を記録した安倍晋三氏も、在任中は派閥を抜けていた」(朝日新聞)。周辺は辞任の狙いではなく、せめてなぜ派閥会長を続けたのか、その理由を明らかにすべきだろう。すべてが後手。にもかかわらず、後出しジャンケンがまるで理にかなっているかのような認識。言いたくないが、これが宏池会の当たり前の認識なのか。そんな気さえしてくる。先々週、用事があって広島に行ってきた。仕事が終わったあと原爆記念館に寄った。8月6日午前8時15分、この時起こった悲惨で非常な悲劇を記憶に焼き付けたあと、記念資料館で一冊の本を買った。前館長の志賀賢治氏が書いた「広島平和記念資料館は問いかける」だ。原爆の悲惨さはいうまでもない。だが、被曝の翌日から悲劇の記録を後世に伝えようと、放射能まみれの資料の収集に奔走した初代館長・長岡省吾氏の筆舌に尽くしがたい苦闘の連続に胸が打たれた。

この本を読んだせいだろうか。岸田総理の「薄っぺらさ」が頭の中を駆け巡って離れなくなった。広島サミットを主催した総理。世界の指導者に原爆の悲惨さを訴え、核兵器廃絶を呼びかけた総理。選挙区は広島第1区。まさに原爆ドームと資料館が存在する選挙区である。祖父の代から数えて3代目、ピッカピッカの世襲議員だ。生活の詳細は知らないが、おそらく東京でなに不自由なく育ったのだろう。歴代館長が舐め続けてきた艱難辛苦の実態を知っているのだろうか。当選10回を数える。この長い議員生活のなかで総理は、問題を抱え戸惑い四苦八苦しながら悲劇の伝道師たらんとした歴代館長以下、歴史資料館の人たちにの努力に、どこまで寄り添ってきたのか。地元の被爆地における地道な政治活動の積み重ねがあれば、この期に及ぶ会長辞任など、かくも軽薄な対応は取れないのではないか。知っている人がいたら教えて欲しい。

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