世界5カ国目の月面着陸に成功した日本の小型実証機「スリム(SLIM)」の「マルチバンド分光カメラ」と呼ばれる特殊なカメラが、月面での2度目の本格的な活動で正常に動作しなかったことが4日、分かった。岩石の成分を分析するもので、スリムの目的である月の起源の謎解明に必須の装置。これまでの撮影データは不完全な部分があり、研究への影響が懸念される。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、今年2月25日からの2度目の本格的活動を開始する前、氷点下170度もの超低温に達する過酷な「月の夜」を越えた際に不具合が生じたとみられる。月の岩石成分と地球の岩石成分を比較することで、月の成り立ちや歴史を探ろうとしていた。
2度目の本格的な月面活動を行っていたスリムは3月1日午前3時ごろ、機体周辺が「日没」となったため活動を休止した。活動中は、通常の光学カメラで周囲の様子を撮影し、地球へのデータ送信に成功した。ただ、マルチバンド分光カメラは、起動はできたが正常に動作しなかったという。
今年1月20日未明に月に着陸したスリムは、同月28~31日、最初の本格的な活動を行った後、最初の月の夜を迎えて休眠状態に入ったが、マルチバンド分光カメラによる撮影画像は部分的な欠損が目立った。そのためカメラの状態を分析して撮影プログラムを修正し、夜明け後の2度目の本格的活動で、完全な画像の撮影を目指していた。
今後は活動中に得られた機体のデータを詳細に分析し、3月下旬に訪れる次の活動機会にはどんな作業が可能かを検討。準備を進めるという。