Jenny Seung Min Lee、Sohee Kim、Whanwoong Choi
- 米野球人気伸び悩みで、MLBは米国外の市場に成長機会求める
- アジアでの成長の鍵は試合の質だけでなくブランド力、
大谷翔平、山本由伸両選手が所属するロサンゼルス・ドジャースと、ダルビッシュ有、金河成両選手を擁するサンディエゴ・パドレスが対戦する米大リーグ(MLB)開幕戦が20、21両日、韓国ソウルで開催される。試合のチケットは発売開始わずか1時間で完売。ソウルではMLBの帽子やウエア姿のファンが急増し、会場の高尺スカイドームには数万人のファンが詰めかける見込みだ。
MLBが韓国を開幕戦の地に選んだことには理由がある。米国で野球はバスケットボールやアメリカンフットボールに追い抜かれ、もはや若者の憧れのスポーツではなくなった。103億ドル(約1兆5000億円)規模の野球業界は、米国外に成長機会を求めている。日本や韓国に野球が伝わったのは1世紀以上前だが、海外進出した自国の野球選手の試合を国内で観戦したり、ストリーミングサービス、グッズなどに出費したりする新しいファン層が生まれたのは、ここ数十年の出来事だ。
アジアで野球人気が高まっているのはデータでも明らかだ。MLBによると、アジアでのファンは2021年から23年にかけて8.2%増加。日本においては、大谷選手の活躍でオンライン観戦の契約数は18年から倍増した。23年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝戦で大谷選手はロサンゼルス・エンゼルスのチームメイトだったマイク・トラウト選手から三振を奪って日本チームを優勝に導き、650万人の視聴者を熱狂させた。
「米国外での成長は、野球人気を高める最大の機会の一つだ」と、MLB運営戦略統括責任者のクリス・マリナク氏は語る。開幕戦が開催される韓国については、「 世界で3 番目に大きな収入をもたらす国際市場であり、われわれは消費者製品やライセンス商品はじめ、多くのビジネスを行っている」と話した。
一方、MLBの将来の人気拡大の鍵を握っているのは、スポーツマンシップや試合の質だけでなく、ブランド力かもしれないということをMLBが十分理解することが必要となる。MLBグッズ販売のライセンスを取得した韓国アパレルF&Fはアジア全域に拡大しており、中国では1000店舗以上を展開する。ヤンキースやレッドソックス、ドジャースのロゴマークは、ルイ・ヴィトンやシャネル並みに普及した。
ソウルの弘大(ホンデ)と新沙洞(カロスキル)地区にあるF&FのMLBストアには、31万9000ウォン(約3万6000円)のヤンキースジャケットや、9万9000ウォン(約1万1000円)のドジャーススニーカーが販売されている。こうした品ぞろえからも、MLBストアがファン向けショップではなく、ファッションブランドとなっていることが分かる。
韓国での開幕戦とブランド力確立は、より大きな中国市場への地ならしという意味合いもある。MLBは07年から中国で活発に活動していると、MLBチャイナのマネジングディレクター、トニー・チー氏は21年に行われた北京の米国商工会議所とのインタビューで語った。中国には推定4100万人の野球ファンがいるが、人口約14億人のこの国で、野球選手はわずか約3000人にとどまっている。
MLBは若者や小学生向けのプログラムを通じて、才能ある若者が最終的に大リーグに進出して中国ファンを増やし、商品販売の機会を作る好循環を狙っている。共産党の支持やMLBへの高い関心にもかかわらず、野球は依然バスケットボールやサッカーの人気に大きく後れをとっている。
MLBのマリナク氏は「重要なのは、私たちのブランドを各市場の文化的要素と結び付け、ある国で文化的に通用するものでも他国では通用しないことを理解することだ」と説明した。
原題:MLB Brings Shohei Ohtani, Season Openers and Big Dreams to Seoul(抜粋)