文部科学省は、高市政権が掲げる「新技術立国」の実現に向けた人材確保策の一環として、小中高校生の理系教育に取り組む拠点を全都道府県に整備する方針を固めた。拠点となる大学などに補助金を交付する新事業を来年度に始める。地域の教育委員会などの協力を通じて、意欲や能力の高い子どもを受け入れ、将来のイノベーション(技術革新)を担う人材の早期発掘と育成につなげる。

 科学技術の人材政策に関する文科省有識者会議の提言案に盛り込まれ、10日に予定する会議で示される。

 新事業では、全国の国公私立大や高等専門学校を対象に公募を行う。自治体の教育委員会などの協力を得ることが選定の条件で、理系人材の育成拠点として、今後5年をめどに全都道府県に1か所以上整備する。

 拠点として選ばれた大学などには、実験に使う資材の購入費や人件費などとして、選定から5年間、1拠点あたり年間5000万円規模の補助金を交付する。来年度予算の概算要求に関連費を盛り込む方針だ。

育成拠点は、連携する教育委員会などを通じて、小中高校に在籍する児童・生徒に参加を呼びかける。専門性の高い実験の指導や学会発表の機会を提供するほか、大学教員による出前授業など理系人材の裾野を広げる活動にも取り組む。文部科学省

 育成拠点には、指導を担った大学教員の人事評価を適切に行うほか、協力した大学院生に報酬を支払うなど、全学的な体制を整えてもらう。文科省の補助終了後も、自主財源で同様の事業を続けるよう求める。

 理系人材の拡充は、国の科学技術力の土台にもつながる。経済産業省の推計によると、国内では2040年代、人工知能(AI)の活用などで事務作業の効率化が進んで文系人材が余る一方、理系人材は不足する。ただ、大学の理工系分野の学科への進学率(22年)は19%にとどまる。ドイツや韓国などは30%台で、日本は先進国の中でも低い。

 このため提言案では、理系人材を増やすためには学校の授業頼みではなく、専門性の高い大学などの支援の必要性を指摘する。

 人材育成を巡っては、文科省が23年度から小中高生が行う実験などを大学が支援する事業を行っている。ただ実施機関が大都市圏に偏っているほか、子どもや親の意欲に左右されやすく、人材を広く発掘するには課題があった。大学も教員の熱意に頼りがちで、持続的な支援が不十分だった。

 文科省幹部は「科学技術人材の育成は大学の重要な使命の一つで、組織的に取り組む機関を増やしたい。優秀な人材を自校に呼び込む機会になるため、大学側の利点も大きい」と話す。