
[ワシントン 5日 ロイター] – 米労働省が5日発表した5月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は17万2000人増加し、市場予想を大きく上回った。雇用は3カ月連続で力強く伸びたほか、失業率は4.3%と3カ月連続で横ばい。労働市場が勢いを取り戻しつつあることが確認され、連邦準備制度理事会(FRB)にとって金利を現行水準に据え置く余地が広がったとの見方が出ている。
ロイターがまとめたエコノミスト予想は8万5000人増、予想レンジは5万人増─12万5000人増だった。4月は当初発表の11万5000人増から17万9000人増に上方修正された。3月分も18万5000人増から21万4000人増に上方修正され、3、4月の合計で9万3000人上振れした。
これまでの3カ月間の雇用増は月平均で18万8000人。2025年の同時期と比べて約3倍の水準になる。
時間当たり賃金は前年比3.4%増と、伸びは4月の3.6%から鈍化した。4月のインフレ率は3年ぶりの高水準となっており、インフレ調整後の家計可処分所得は3カ月連続で減少。貯蓄率は4年ぶりの低水準にあり、生活費の上昇で家計の購買力が圧迫される中、個人消費の下振れにつながる可能性がある。
雇用者数が増加した業種の割合は54.4%と、4月の54.0%から増加 し、6カ月ぶりの高水準。ただ、平均労働時間は34.3時間で横ばいだった。
<利上げのハードルなお高い可能性>
今回の雇用統計を受け、金融市場ではFRBは今年12月の会合で利上げに踏み切るとの観測が高まった。ただエコノミストの間では、賃金の上昇が緩やかな水準にとどまっていることを踏まえると、利上げのハードルは依然として高いとの見方も出ている。
FHNフィナンシャルのシニアエコノミスト、ソフィア・カーニーレダーマン氏は「今回の雇用統計は、労働市場が安定した状態にあることをFRBに確認させるものだった」とし、「6月の連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、インフレがFRB政策の唯一の焦点になる」と指摘。ウェルズ・ファーゴのチーフエコノミスト、トム・ポーチェリ氏は「労働市場が過熱状態に戻ったわけではないものの、FOMC内のタカ派の勢いを増す状況は続く」と述べた。
ネーションワイドのチーフエコノミスト、キャシー・ボスチャンチッチ氏は「FRBが年内に利下げに動くと考える説得力のある理由はない」としながらも、現時点で利上げを予想するのは尚早とも指摘。「FRBが利上げを検討するには、エネルギー価格の上昇が直接的な影響を超えて他の財・サービス価格に波及し、これまで抑制されてきた債券市場のインフレ期待が揺らぐ必要がある」と述べた。
雇用者数の改善は低水準のレイオフ(一時解雇)が主因で、企業は不確実性への対応から採用拡大に慎重になる中、エコノミストは税還付や輸入関税の還付という形での財政刺激策が、原油価格の急騰を通じてインフレを刺激してきた中東紛争の影響を和らげていると指摘。企業収益は2025年第2・四半期以降増加しており、大規模な人員削減を控えることが可能になっているものの、米国とイスラエルによるイランとの戦闘が長引けば、労働市場のリスクは残ると警告している。
トランプ米大統領は、好調な雇用統計を受けて株価は上昇するはずだと言及。その後、金利の引き下げが望ましいとした上で、FRBが利下げを決定するかどうかはウォーシュFRB議長に判断を委ねるとの考えを示した。FRBは16─17日にFOMCを開く。
<レジャー・接客業が雇用増をけん引>
雇用増加をけん引したのはレジャー・接客業で、7万人増と過去12カ月平均の月間1万4000人増を大きく上回った。うちレストラン・バーで4万8000人増えており、サッカーのFIFAワールドカップに備えた採用とみられる。
地方政府は5万5000人増、ヘルスケアは3万5000人増。社会福祉、鉱業、採石、石油・ガス採掘でも雇用が増えた。
一方、金融業は2万2000人減で、2025年5月のピークから10万7000人減少した。保険・関連業務や商業銀行で減少が目立った。
<労働参加率、4年半ぶりの低水準>
雇用の堅調な増加は、失業率の算出に用いられる家計調査にも反映され、家計ベースの就業者数は14万9000人増加し、新たに労働力人口に加わった8万3000人が十分に吸収された。
ただ、労働力人口が昨年12月以降で約140万人減少する中、労働参加率は61.8%と横ばいで、4年半ぶりの低水準にとどまった。
