Jeffrey Goldfarb
[香港 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 友情を育むビジネスを成長させた割には、フェイスブックは驚くほど多くの敵をつくっている。英米2紙が報じた、フェイスブック利用者約5000万人の個人情報が不正に収集されていたとの疑惑を巡って、同社の慣行に改めて怒りの声が上がっている。事態は、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が、手に負えない窮地に陥っているわけではないことを何とか証明しなければならないところまで来ている。
この33歳のハーバード中退者は、大学寮の自室でフェイスブックを開設してから、時価総額5400億ドル(約57兆円)の巨人に成長させるまでの間、常に疑いの目を向けられてきた。それを乗り越えてきた実績で増長された傲慢(ごうまん)は、いまや誰の目にも明らかだ。ザッカーバーグ氏は、政治や文化、社会にこれほど大きな影響力を持つ巨大企業を運営することに伴う責任に無関心か、責任を取る能力がないように思われる。そのことは、今回の疑惑を巡る会社側の不十分な対応を見ても分かる。
米紙ニューヨーク・タイムズと英紙オブザーバーは17日、2016年の米大統領選でトランプ陣営が契約していたデータ分析会社、ケンブリッジ・アナリティカ(CA)がフェイスブック利用者約5000万人の個人情報を不正に収集していたと、内部告発者の話を基に報じた。さらに悪いことに、フェイスブックはその事実を把握しながら、利用者に警告しなかったと2紙は報じている。
この恐ろしい指摘に対してフェイスブック側が示した最初の反応は、これは技術的には「データ流出」ではないとの的外れな弁解を行い、遅ればせながらCAのアカウントを停止したことだった。社外からの反応は、明らかに、そして当然ながらより厳しかった。米国では、情報流出について捜査を求める声が議員から上がっている。民主党のクロブシャー上院議員は、自身が委員を務める上院司法委員会で証言するようザッカーバーグ氏に要請した。
英保守党議員の1人は、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問うた国民投票へのロシア介入に関する議会調査の場でザッカーバーグ氏が証言することを求めた。ザッカーバーグ氏はこの1年あまり、各地の住民と触れ合うアメリカ横断の旅には乗り出したが、こうした要請からは逃げ続けている。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。