29日の米株式相場は大幅安。1カ月余りで最大の下げとなった。この日は、イタリアの政情不安で欧州の安定が脅かされるとの懸念から、世界的に株安となった。一方で米国債は急伸し、原油は値下がり。外国為替市場では円が上昇した。
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米国株は、欧州の市場が引けた後に下げ足を速めた。欧州株は3月以降で最大の下げとなった。米国では、10年債利回りが一時17ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下と、英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が決定した2016年6月以来の大きな下げ幅となった。株式市場ではボラティリティーが高まり、投資家の間では円やスイス・フランといった安全資産を求める動きが強まった。
S&P500種株価指数は前営業日比1.2%安の2689.86。ダウ工業株30種平均は391.64ドル(1.6%)下げて24361.45ドル。米国債市場では、ニューヨーク時間午後4時59分現在、10年債利回りが15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.78%。
ニューヨーク原油先物市場のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は5営業日続落。サウジアラビアとロシアの増産見通しが重しとなった。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は1.15ドル(1.7%)安の1バレル=66.73ドルと、6週ぶり安値。ロンドンICEの北海ブレント原油7月限は9セント上げて75.39ドル。
ニューヨーク金スポット相場は上昇。日中は上げ下げを繰り返す展開となった。イタリアの政情不安の高まりから世界的に株価が下落した一方、ドルは値上がりした。ニューヨーク時間午後2時9分現在、金スポット相場は0.2%上昇の1オンス=1301.81ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は0.4%安の1304.10ドルで終了した。
イタリアで再選挙が必要になるかもしれないとの観測から、世界の金融市場に動揺が走った。米国株はこの日の最安値からはやや戻したものの、リスクオフの地合いは日中を通じて続いた。市場ではこのほか米朝首脳会談を巡る動きやトランプ政権による中国輸入品への関税賦課の計画も注目されている。
オークブルック・インベストメンツの共同最高投資責任者、ピーター・ジャンコブスキス氏は「イタリアの政局は厄介な状況になっており、ユーロ相場全般の力強さに対しても懸念が広がっている。さらにそこから、一部では米金融当局が利上げペースを減速させる可能性があるとの見方も広がってきた」と述べた。