けさ一番気になったニュースはこれだ。「中国政府系シンクタンク、『金融パニック』リスクを警告-内部文書」と題されたブルームバーグ(BB)の記事。それによると「中国の政府系シンクタンクが、国内で『金融パニック』が発生する可能性を警告していたことが明らかになった」という。BBは「市場の乱高下と貿易を巡る緊張が高まる中で、中国の政策を担う一部エリートの間で懸念が強まっている兆しを示した』と解説をつけている。テレビニュースに時々登場する習近平主席は、いつものように悠然と構えており、国内の経済動向を気にしている様子はない。だが、BBが流したニュースが事実だとすれば、中国の内部事情は意外に深刻なのかもしれない。

ここで政府系シンクタンクと呼ばれているのは、「中国国家金融・発展実験室(NIFD)」という組織だ。これが何をする組織かわからないが、発展実験室という名称にあまり馴染みはない。政府系シンクタンクとあるから研究所のようなものあろう。そこの調査報告が警鐘を鳴らしている。どこ宛の報告書か不明だが、悪材料を取り上げた報告書が公になること自体が中国では珍しいことだ。同報告書は「米国の金利上昇と通商対立が続く時期にあって、債券のデフォルト(債務不履行)と流動性の不足、最近の金融市場の落ち込みがとりわけ脅威を呈している」と懸念をしめしている。中身自体は一般的で誰でもが想像できる程度のものだ。だが、この調査報告は「25日にウェブサイトに一時掲載され、短時間で削除された」とある。削除されたということは信憑性が高いということだ。

中国経済はここにきて若干弱含みだ。株価が低下傾向を見せはじめている上、信用買い残は株価が急落した2015年以来の高水準に達している。個人的には折に触れて指摘しているが、世界的な金利の上昇は中国の不良債権問題に火をつけかねない。そうなれば人民元の国外流出が再燃する可能性もある。このところ人民元相場が安値を更新していることも気になる。トランプ大統領はこうした中国の経済状況を見抜いて通商問題で強気な姿勢を貫いているのかもしれない。だとすれば、中国は近々アメリカに対抗して振り上げた拳を降ろすということになるのかもしれない。何れにしても中国国内から先行きを懸念する声がで始めたことがニュースだ。中国、要注意だ。