「ダウ自警団」が帰ってきた。

トランプ米大統領が先週末、突然中国に対して融和的な姿勢に変化し、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長がハト派に傾斜した背後には、そうした力が働いたとの見方がある。

投資家は米中貿易摩擦の激化や、米金融当局が経済成長が減速するまで利上げを継続することに疑問を抱くようになり、米株式市場では10月以降におよそ2兆5000億ドル(約282兆円)の時価総額が吹き飛んだ。トランプ氏がかねて自分の成功を誇示するのに引き合いに出すダウ工業株30種平均は大きく下落。S&P500種株価指数は調整の領域に転落した。

しかしながらこの1週間、トランプ氏もパウエル氏も相次いで姿勢を急変させたのは、市場が「要求した」からだと、ホライゾン・インベストメンツのチーフ・グローバル・ストラテジスト、グレッグ・バリエール氏は指摘する。

ヤルデニ・リサーチの主任ストラテジスト、エド・ヤルデニ氏は「ダウ自警団はパウエル・プットとトランプ・プットの両方をマーケットに導き入れることに成功した」と話す。「ジェローム・パウエル氏は先週の水曜日、サンタクロースに変身した。金融引き締めのペースが一段と漸進的になるとの示唆に、マーケットが喜びに沸いたのは言うまでもない。パウエル氏がサンタなら、トランプ大統領と習近平国家主席の2人はクリスマスエルフだ」と語った。

投資家が債券を売ることで金融政策や財政政策への不満を示す債券自警団という表現を、ヤルデニ氏が用いたのは1983年にさかのぼる。同氏がこれを株式市場に適用したのはこれが初めてではない。同氏は今年3月、トランプ氏が中国との貿易摩擦を激化させ、鉄鋼・アルミ関税を発動したことに対し、ダウ自警団が株式売りで不満を示したと述べていた。

原題:‘Dow Vigilantes’ Calling the Shots as Fed, Trump Change Course(抜粋)