日本銀行が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)で、代表的な指標の大企業・製造業の業況判断指数(DI)はプラス12となり、前回の昨年12月調査から7ポイント悪化した。悪化は2四半期ぶり。悪化幅は2012年12月調査以来、6年3カ月ぶりの大きさとなった。中国など世界経済の減速懸念が高まった影響が出た。
短観は全国の約1万社に3カ月に1度、景気動向を聞く。DIは景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いた指数。
大企業・非製造業のDIは3ポイント悪化のプラス21で、2四半期ぶりの悪化となった。中小企業・製造業のDIは8ポイント悪化のプラス6、中小企業・非製造業が1ポイント改善のプラス12だった。
米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題を巡る不透明感が強まり、中国や欧州では経済の減速が目立つ。3カ月後の先行きDIは大企業・製造業が4ポイント悪化のプラス8、非製造業が1ポイント悪化のプラス20だった。(柴田秀並)
景気拡大の「終わり」、企業実感
1日に発表された日銀の3月短観は、大企業・製造業の景況判断指数(DI)が6年3カ月ぶりとなる悪化幅を示した。昨年から小刻みな悪化を続けながらなお高い水準にあったDIは約2年ぶりの水準にまで落ちこみ、企業は6年を超えて続いてきた景気拡大の「終わり」が迫っていることを感じ取っている。
製造業を直撃したのが中国の景気失速だ。政府の貿易統計によると、輸出額は2月まで3カ月連続の減少。特に中国向けで電気機械や生産用機械などが低迷している。2月の鉱工業生産指数は1月の中国の春節休暇の反動で4カ月ぶりに上昇したが、電子部品の生産が大きく落ち込んだ。
大企業・非製造業は小幅な悪化だった。東京五輪関連の投資が活発な建設などが好調だった。ただ、人手不足によるコスト上昇や、インバウンド(訪日外国人客)需要の鈍化が足を引っ張っている。
大企業・製造業のDIは2017年12月調査の「プラス25」をピークに低下を続けてきた。18年は台風などの自然災害の影響で悪化し、その後はいったん横ばいになるなど持ち直したが、今回の短観では減速が鮮明になった。
今後も、米中通商協議や英国の欧州連合(EU)離脱問題をめぐる不透明感は強い。米中協議がまとまっても、その後には「本丸」の日米協議が控えるだけに、協議の行方によっては製造業へのさらなる下押し要因となる。
2018年度は好調だった設備投資計画も、19年度は慎重な見方が示された。弱い外需に、国内投資の減速が重なるようだと、日本の景気後退入りの可能性がさらに高まる。(新宅あゆみ)