[ワシントン 31日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は30─31日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.00─2.25%に25ベーシスポイント(bp)引き下げることを決定した。利下げは2008年以来初めて。FRBは世界経済を巡る懸念のほか、国内インフレの低迷を理由として挙げたが、利下げサイクルの開始は示唆しなかった。 

パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、利下げの背景には軟調な世界経済や通商戦争のほか、低過ぎるインフレ率を押し上げる意図があったと説明。ただ今回の決定は利下げサイクルの開始であるとはみていないと言明した。 

利下げは8対2で決定。ジョージ・カンザスシティー地区連銀総裁とローゼングレン・ボストン地区連銀総裁が景気拡大が継続し、失業率が50年ぶりの低水準にある中での利下げに疑問を呈し、金利据え置きを主張した。 

利下げと同時に、バランスシートの縮小を8月1日付で終了することも決定。従来の計画から2カ月前倒しした。 

FRBはFOMC声明で、「経済見通しに対する世界動向の影響や弱いインフレ圧力を考慮し」利下げを決定したと表明。「FF金利の目標誘導レンジの将来的な道筋を熟考するに当たり、経済の見通しについて今後もたらされる情報の意味合いを引き続き注意深く監視し、力強い労働市場と対称的な目標である2%に近いインフレ率とともに、景気拡大を維持するために適切に行動する」とした。 

また、6月のFOMC以降に入手した情報は「労働市場が力強く推移し、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示していると表明。「雇用の伸びは概してここ数カ月堅調で、失業率は低いままだった。家計支出の伸びは今年初めから上向いたが、企業の設備投資の伸びは軟調だった」とした。 

利下げはインフレがFRBが目標とする2%に上昇する一助となるとの見方を示したものの、「この見通しに対する不透明感は残る」とした。 

パウエル議長は記者会見で、今回の利下げは「サイクルの半ばにおける調整」的な性格を持つと説明。今後、大幅な利下げが実施されることを示唆する発言ではないと受け止められた。 

米株価はFOMC声明発表後、さらにパウエル議長が記者会見を行っている間に急落。ダウ工業株30種.DJIは1.23%、S&P総合500種.SPXは1.08%下落して終了した。ロイトホルト・グループの首席投資ストラテジスト、ジム・ポールセン氏は「パウエル議長が今回の利下げは1回限りのものであることを示唆したことが株価急落のきっかけとなった」との見方を示した。 

外国為替市場では主要6通貨に対するドル指数.DXYが上昇し、約2年ぶりの高値を付けた。 市場では25bpでの利下げは織り込み済み。FRBは今後の利下げについてより明確に示すとの見方が出ていた。 

ファースト・フランクリン・フィナンシャル・サービシズ(フロリダ州)の首席市場ストラテジスト、ブレット・エウィング氏はFRBの決定について「現時点で保険をかけておく決定を下したのは賢明だった」と指摘。「(資産縮小を終了させ)量的引き締めを終わらせる決定も正しい選択だった」と述べた。 

トランプ米大統領はFRBがFOMCを開始した30日、FRBがより早い時期に行動を起こさなかったために米国は不利な立場に置かれているとし、大幅な利下げを決定するよう圧力を掛けていた。FRBの利下げ幅が25bpにとどまったことで、トランプ氏が不満を募らせる可能性がある。