週末にスウェーデンで米朝の実務者協議が行われた。8時間半に及んだ協議のあとで北朝鮮代表の金明吉(キム・ミョンギル)氏は大使館前で記者団に「交渉は決裂した」と発表した。これに対して米国務省のオルタガス報道官は北朝鮮側のコメントについて、「(協議の)中身や精神」を反映していないと指摘。2週間後に再協議するというスウェーデン政府の招待を米国側は受け入れたと説明した。相対立する両者の見解、交渉終了直後に決裂宣言をした北朝鮮の思惑。裏で何があったのか判然としないが、メディアの報道から推察すると北朝鮮が米国に「揺さぶり」をかけているように見える。要するに弱体化するトランプ政権から譲歩を引き出そうとする戦略だろう。これに対してトランプ政権が有効な手を打てるか注目されるが、形勢は明らかにトランプ大統領に不利だ。
今回の米朝協議、北朝鮮側の不満が具体的に何かは良くわからない。だが、 金明吉代表は声を大にして「決裂」と叫んでいる。ロイターによると同氏は「決裂」の理由について、「米国が旧態依然の立場と態度を捨てられなかったからだ」と主張。物別れに終わった2月のハノイでの米朝首脳会談以降、再考の時間を十分に与えたにもかかわらず「米国は手ぶらで協議に出てきた」と不満を表明、問題を解決する考えがないことを示したと非難した。これに対して米国は国務省のオルタガス報道官が「米国は創造的なアイデアを持ち、DPRK(朝鮮民主主義人民共和国)のカウンターパートと良好な協議を行った」との声明文を発表。米代表団は協議の進展につながる多数の新構想を事前に確認していたとも述べており、前向きに交渉に臨んだと強調する。ただ、「重大な問題があり、(その解決には)両国による力強いコミットメントが必要だ。米国はそのコミットメントを有している」とも。
金明吉氏はこの日、協議の席を一時外して大使館に移動し、約2時間後に協議に復帰。声明は協議終了後、間もなく発表されたことから、本国と連絡の上、既に「決裂の演出」を準備していた可能性があると、韓国の聯合ニュースが伝えていると時事通信が転電している。要するに決裂は韓国の演出というわけだ。聯合ニュースは今朝方未明にも、「北朝鮮は米国が北朝鮮に対する『敵対的な政策』を撤回する措置を講じるまで、米国とさらなる協議を開催することには乗り気でない」と表明したとも伝えている。手の込んだ揺さぶりといっていい。ウクライナ疑惑でトランプ政権を告発する2人目の政府高官が名乗り出そうだとのメディアの情報もある。功を焦るトランプ氏の足元を北朝鮮は完全に見透かしている。瀬戸際外交の本領発揮だ。事前には大幅な譲歩を準備していると伝えられたトランプ氏、こうなると譲歩が大統領選挙のマイナス要因になりかねない。