【2月10日 AFP】中国・武漢(Wuhan)で新型コロナウイルスの起源を調査していた世界保健機関(WHO)と中国の合同調査団は9日、会見を開き、同ウイルスを人へと感染させた宿主動物はいまだ特定できていないと報告した。また同ウイルスが武漢市内の研究所から流出したという説については、「その可能性は極めて低い」との見方を示した。
専門家らの間では、新型ウイルスはコウモリ由来で、別の哺乳類を介して人に感染したと考えられている。中国班の梁万年(Liang Wannian)代表は、動物から人が感染した可能性は高いものの、これまでのところ「保有宿主は特定されていない」と明かした。
また梁氏は「2019年12月より前に、新型コロナウイルスが市民に感染したことを示すものはない」として、以前から市内にウイルスが広がっていたと結論付けるには「証拠不十分」だと述べた。
梁氏は、調査結果から新型ウイルスが「コールドチェーン(低温物流)の製品に付着して長い距離を移動した可能性」があると報告。ここしばらく中国国内で広がっている、同ウイルスが持ち込まれた可能性に含みを持たせる発言とみられている。
一方WHO班の代表は「同ウイルスの人への感染を説明する上で、研究所での事故という仮説の可能性は極めて低い」と語り、「よって今後の研究に向けてわれわれが提案するのは、その仮説を掘り下げていくものではない」との考えを明らかにした。
調査団は中国に1か月滞在。2週間の隔離を経て、残りの2週間で現地調査を行った。最初に多数の感染例が確認された海鮮市場の視察時間はわずか1時間で、また数日間は滞在先のホテルにとどまり、さまざまな中国当局関係者らと面会したとみられている。
武漢ウイルス研究所(Wuhan Institute of Virology)には4時間近く滞在し、綿密な調査を行った。コウモリのコロナウイルスの著名な専門家である、同研究所の石正麗(Shi Zhengli)副所長ら中国の専門家らとも会った。
しかしウイルスが武漢で最初に確認されてから既に1年が経過していることに加え、視察先に中国が感染の封じ込めに成功したことをアピールする展覧会も含まれるなど、その一部については、ウイルスの起源を突き止めるという本来の目的との関連性が疑問視されるものもあった。
映像はWHOと中国の合同調査団の会見、9日撮影。(c)AFP