新型コロナウイルスのワクチン接種を終えた人が人口の80%を超えるシンガポールでは、政府が行動制限の緩和をすすめる中、感染者が増加し、27日から再び規制を強化しました。

シンガポールでは、新型コロナウイルスのワクチン接種を終えた人が人口の82%と世界的に高い水準となり、政府が、先月から行動制限の緩和をすすめてきました。

しかし、その後、感染力の強い変異ウイルスの「デルタ株」が広がり、26日、一日の感染者数としてはこれまでで最も多い1939人の感染が確認されました。

シンガポール政府は「過去28日の感染者の98%が軽症か無症状だ」として、ワクチン接種の効果は出ているとしていますが、今後、医療がひっ迫するような事態を防ぐため、27日から、飲食店での食事は1組当たり2人までに制限したほか、企業は原則在宅勤務とするなど再び規制を強化しました。

一方、新たな感染者数が連日1万人を超えるタイでは、政府が27日、全土に出されている非常事態宣言を、ことし11月末まで延長するとともに、首都バンコクなどで、午後10時から午前4時まで夜間の外出を禁止する措置を継続する方針を明らかにしました。

タイでは、ワクチンを2回接種した人が人口の26%にとどまっていて、政府が接種を急ぐとともに、警戒を強めています。

感染拡大のタイに日本政府が酸素濃縮器を提供

タイでも、感染力が強い「デルタ株」が広がっていて、この2か月あまり、1日の死者の数が100人から300人の日が続くなど深刻な状況となっています。

このため、日本政府は、重症化した人の治療に使われる酸素濃縮器868台を緊急に航空機で輸送し、27日、タイ側に引き渡しました。

日本政府は、これまでにおよそ165万回分のアストラゼネカのワクチンも無償でタイに提供していて、感染拡大の危機に直面しているタイへの支援を強化しています。

タイのタクシー会社 稼働していない車を使い野菜を栽培

タイでは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、夜間の外出や飲食店での酒の提供を禁止するなどの規制が続いていて、飲食業や観光業などに影響が広がっています。

首都バンコクのタクシー会社では、今月から、稼働していないタクシーおよそ300台の屋根やボンネットで、従業員が、なすやとうがらしなどの野菜の栽培を始めました。

収穫した野菜は、収入の減った運転手や従業員に配られるということです。

タクシー会社の代表のターパゴーン・アサワルークンさんは「乗客がいないため、車を止めておかざるを得ず、多額の損害が出ている。政府には、少しずつ規制を解除し、ビジネスが続けられるようにしてほしい」と話していました。