ロシアによるウクライナ侵攻が発表された24日、国内外で「反戦デモ」が同時多発的に開かれた。プーチン政権は首都モスクワで機動隊を投入し、老若男女を問わず参加者を拘束。素早い弾圧の背景にあるのは、自国世論の反発が拡大すれば、作戦遂行に支障を来すとの危機感だ。
◇国家による同胞殺害
「戦争反対」。独立系放送局「ドシチ」によると、国内52都市で計数千人がデモに参加。人権団体OVDインフォの集計では、全土で1800人以上が拘束された。無許可デモが違法で摘発されることを覚悟の上で、人々はプラカードを掲げ、青と黄のウクライナ国旗を振った。
ロシアとウクライナをまたいで親族を持つ人も多いとされる。2014年のクリミア半島併合やウクライナ東部への軍事介入の際も、ロシア国内で反戦デモが起きたが、今回のような「開戦当日」の大規模なデモ発生は極めて異例だ。
8年前は非軍事力を組み合わせた「ハイブリッド戦争」で記章のない部隊や義勇兵が参加。ロシアは軍事介入をしていないというのが建前だった。一方、プーチン大統領は24日に「ウクライナでの特殊作戦」開始を発表。今回は正規軍の「戦争」そのものであり、ロシアという国家が同胞の殺りくを行うに等しいと受け止められている。
◇ノーベル賞受賞者も
「自分の国が行っていることが恥ずかしい」。ロシア政府機関の元職員の男性は24日、取材に対して心境を語った。政府内が一枚岩でないことを示唆している。
21年のノーベル平和賞受賞者で独立系紙「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長ドミトリー・ムラトフ氏は24日、動画の声明で「(プーチン政権内に)戦争を止める人は誰もいない」と悲観。核戦争に発展する恐れもあると警鐘を鳴らした。その上で「ロシア人の反戦運動だけが、この惑星上の命を守ることができる」と話し、政権に異を唱えるよう呼び掛けた。
ロシア軍の人的損害も既に伝えられる中、人権団体「ロシア兵士の母の会」は、徴兵された若者が、より長期間勤務する契約軍人になるよう強いられ「ウクライナ国境に送られている」と問題提起している。
◇「侵略」に憤り
ロシア軍が侵攻ルートに利用した隣国ベラルーシにも波紋が広がる。ベラルーシ国民は、言語が似ているウクライナへの親近感が強い。ノーベル平和賞候補に挙がる反政権派スベトラーナ・チハノフスカヤ氏は「(ルカシェンコ)政権はわが国を侵略国に変えた」と述べ、憤りをあらわにしている。