トラス首相が与党・保守党の党首選を戦った期間よりも短い日数で辞任に至り、英国は再び次期首相選びに入る。
トラス氏は20日、辞任を表明した記者会見で、保守党は1週間以内の次期党首選出を目指しており、後任が決まるまで首相職にとどまると述べた。現職の閣僚では早くも、ハント財務相が不出馬の意向を示した。
保守党からは過去7年足らずで5人目の首相となる後任は、支持率で主要野党・労働党に30ポイント以上の大差を付けられた保守党の再建という重責を託されることになる。可能性のある人材として、以下の名前が挙がっている。
有力候補
スナク元財務相:今夏の保守党党首選でトラス氏とともに上位2人に残ったスナク氏は、トラス氏の計画は市場の混乱を引き起こすと正しく予測し、経済政策に関する自身の信頼を高めた。ただ、ジョンソン前首相辞任の引き金を引いた存在と多くに見なされていることが、引き続き同氏への支持拡大を阻んでいる。一般市民が高インフレ下のやりくりに苦労する中で、莫大(ばくだい)な個人資産を持っていることもマイナスに働いている。
モーダント下院院内総務:今夏の党首選で3位だったモーダント氏は、保守党の一般党員に人気がある。通商政策担当相や国防相を歴任した。18日の議会では野党の追及を手際よくさばき、存在をアピールした。経済でも信頼できることを党内に示す必要はあるだろう。
ジョンソン前首相:前首相の返り咲きがあるのだろうか。英国で首相経験者が再登板した例は、1960年代から70年代にかけて首相を2回務めた労働党のハロルド・ウィルソン氏にさかのぼる必要がある。だが、ジョンソン氏は常に政治的力学の法則に逆らってきた。数カ月前まで首相だったジョンソン氏には、依然として党所属議員と一般党員から一定の支持がある。首相在任中の行動について近く調査が始まる見通しで、それが支持者の離反を招く恐れもある。
ダークホース
ウォレス国防相:高水準の防衛支出が必要だと考える党の一角にアピールできる、安定感のある人材だとみられている。ただ、党首選への出馬を繰り返し否定し、国防相の職を続けたい意向を示している。
ブレーバーマン前内相:規定違反で19日に内相を解任されたブレーバーマン氏は、首相就任の夢を捨てる用意はないかもしれず、出馬となれば党内右派に支持を呼び掛けそうだ。解任は個人の電子メールから公的文書を送付したことが理由で、同氏は重大な件ではないと主張している。
バデノック国際貿易相:今夏の党首選に出馬した1人で、再び出馬を考えるかもしれない。一般党員に人気で、党首選が一般党員の投票までもつれ込めば勝機が出てくる可能性もある。
原題:Runners and Riders: Who Could Replace Liz Truss as UK Leader?(抜粋)