[北京 11日 ロイター] – 中国は今月、予想外に弱い経済指標の発表が相次ぎ、政策当局は景気刺激策を拡大するよう迫られている。しかし、金融緩和とインフラ支出による景気浮揚効果が限定的であることも、指標は映し出している。10月は輸出が減少し、インフレが鈍化し、新規銀行融資が急減するなど、経済全体に減速の兆しがみられた。しかも中国政府が今年、世界の潮流に逆らって金融・財政政策を緩和しているにもかかわらずだ。
経済指標の悪化を受け、政策当局は刺激策をさらに拡大する必要が出てくるとアナリストはみている。JPモルガンとゴールドマン・サックスは11日の調査ノートで、数週間中に25ベーシスポイント(bp)の利下げが実施されると予想した。
しかし直近の数字を見ると、国内外の需要が低迷を続け、何より中国が新型コロナウイルスの封じ込め策(ゼロコロナ政策)を続けている限り、景気刺激策は思うような効果を発揮できないようだ。
キャピタル・エコノミクスの首席アジアエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は「融資の伸びが予想より大幅に弱かったことは、ゼロコロナ政策によって経済活動が抑圧されている中で成長を刺激することの困難さを鮮明にした」と述べた。
中国は今年の成長率目標である約5.5%を達成できない見通しだ。ロイター調査では3.2%成長にとどまると予想されている。
10月の輸出は2020年5月以来初めて減少し、市場を驚かせた。世界貿易を席巻する中国製造業は今年の夏、例年と違ってクリスマス商戦用の需要急増を経験しなかった。そして今は、1、2月の旧正月に向けた海外からの受注が例年通り年末に盛り上がるかどうかも疑問視されている。
人民元は年初から対ドルで12%近く下落したが、それでも輸出は縮小を免れなかった。
中国の主な輸出相手国が高インフレと金利上昇に見舞われている一方、国内ではゼロコロナ政策によって内需が圧迫されている。このため利下げをしても借り入れ需要が増えるとは予想しづらい。
かつて中国の経済活動の5分の1を占めた不動産市場のバブルが崩壊したこともあり、住宅購入者と銀行の双方が融資契約に後ろ向きになっている。
10日発表された10月の新規銀行融資は前月比で予想以上に減少し、広義の与信・流動性を示す社会融資総量残高は伸びが鈍化した。
INGのグレーターチャイナ首席エコノミスト、アイリス・パン氏は「第4・四半期は例年、融資・与信が静かな時期ではあるが、今年10月のデータはさすがに弱過ぎる」と語る。「(製造業と)貿易のデータを併せ見ると、この月は予想以上に景気減速が深まったとみられる」という。
<独身の日>
消費者の信頼感は相変わらず弱そうだ。アリババ・グループ・ホールディングなど中国の電子商取引会社が数週間にわたり開催した世界最大のオンラインセール「独身の日」は、調査会社によると最終日11日前半の売上高が4.7%減少した。
10月の生産者物価指数(PPI)は2020年12月以来初めて下落し、内需の弱さを裏付けた。10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.1%上昇で、9月の2.8%から伸びが鈍化した。
財政政策の負担は大きくなっている。当局はインフラ投資をさらに増やし、景気回復のために債券を発行して公共事業を進めている。
中国メディアによると、中央当局は地方公共事業の資金手当てを目的とする特別債券について、地方政府が来年の発行枠を年内に一部前倒しで使うことを認めた。
しかし目下のところ、最大の逆風はゼロコロナ政策だ。政府は11日、一部制限措置を緩和し、今後はもっと大幅な緩和が実施されるかもしれないとの期待が芽生えた。
チャイナ・チーフ・エコノミスト・フォーラムのワン・ジュン理事は「ゼロコロナ政策は消費と投資に甚大な影響を及ぼしている。制限措置がもっと緩く、的を絞ったものになれば、消費への圧力は和らぐ可能性がある」と述べた。
(Kevin Yao記者)