ノーベル生理学・医学賞に決まったカタリン・カリコ氏(左)とドリュー・ワイスマン氏(昨年4月、日本国際賞の授賞式で)
スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を「メッセンジャーRNA」(mRNA)ワクチンの基盤技術を開発した米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(68)と同大のドリュー・ワイスマン教授(64)に贈ると発表した。新型コロナウイルス禍で普及したmRNAワクチンで、多くの人命が救われたことが評価された。
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mRNAをワクチンや難病の治療薬として応用しようとする研究は約30年前からあったが、mRNAを人体に投与すると免疫が攻撃して強い炎症が起きるため、安全性で難点があった。これを解決したのがカリコ氏とワイスマン氏で、2人がペンシルベニア大で研究していた2005年、mRNAの一部の化学物質(ウリジン)を別の化学物質(シュードウリジン)に置き換えると、免疫の攻撃が抑えられることを発見した。
この研究がmRNAを医薬品化する最初の足がかりとなって独製薬企業ビオンテックや米モデルナなどのバイオ企業が注目し、がんやインフルエンザなどに対するmRNAを使った次世代の創薬研究が盛んになった。
20年初頭、新型コロナの感染が世界に拡大すると、米ファイザー、モデルナがmRNAワクチンの開発を進め、同年12月に世界で初めて実用化した。
授賞式は、アルフレッド・ノーベルの命日にあたる12月10日にストックホルムで開かれる。
mRNA 細胞が合成するたんぱく質の設計図にあたる分子。塩基という4種類の化合物がひものように連なった構造で、たんぱく質の組み立てに必要な情報を細胞内の小器官に運ぶ伝令役(メッセンジャー)を果たす。