東京都の小池知事は、高校の授業料を実質的に無償化するため、現在、設けられている支援の所得制限を来年度から撤廃する方向で調整を進める考えを示しました。

5日に都議会の定例会が開会し、小池知事は所信表明で「子育て世帯は将来への不安など、さまざまな悩みを抱えている。高校授業料の実質無償化に大胆に踏み出し、スピード感をもって全力でサポートしていきたい」と述べました。

このあと記者団の取材に応じた小池知事は、授業料の実質無償化に向けて、現在、設けられている支援の所得制限を撤廃するのかという質問に対し、「そういう流れをしっかりと確保する。そういう予算にもしていきたい」と述べ、来年度から所得制限を撤廃する方向で調整を進める考えを示しました。

都内の高校の授業料は、現在、年収910万円未満の世帯年収を目安に、
▽都立では、国の支援で無償化されているほか、
▽私立については、都が国の支援に上乗せして、都内にある高校の授業料の平均にあたる47万円余りを上限に助成するなどの支援を行っていますが、都は所得制限を撤廃して支援策を拡充したい考えです。

高校の授業料をめぐっては、大阪府も来年度から所得制限を撤廃して、段階的に無償化する制度の案を明らかにしています。

都は、このほか、小中学校の給食費についても支援していく考えで、今後、来年度予算案を編成する中で、具体的な制度について検討することにしています。

大阪府 来年度から段階的に無償化へ

高校の授業料の支援については、大阪府が来年度から910万円未満の世帯年収を目安とする所得制限を撤廃し、私立、公立ともに段階的に無償化する制度の案を明らかにしています。

現在、私立の場合は、府や国の支援によって、世帯年収の目安が、
▽590万円未満は無償
▽590万円以上910万円未満は、子どもの人数に応じて無償になったり、保護者の負担が軽減されたりします。

また、公立の場合は、世帯年収の目安が910万円未満の場合、国の支援で無償となっています。

これらについて、大阪府は所得制限を撤廃し、来年度から対象となる学年を広げていき、段階的に無償化することにしています。

一方、年間で府が定める「標準授業料」の63万円を超えた場合は、世帯年収に応じ、学校側がその分を負担することになっています。

東京私立中学高等学校協会「選択の自由が広がる」

都内のおよそ240の私立高校などが加盟する東京私立中学高等学校協会の近藤彰郎会長は「所得制限を外すことで保護者の負担を減らすことにつながるので、それ自体はいいことだと思う。制限がなくなることで選択の自由が広がるのではないか」と話していました。

また、大阪府がまとめた所得制限のない高校授業料の無償化の制度の案では、年間で、府が定める「標準授業料」の63万円を超えた場合は、世帯年収に応じ学校側がその分を負担することになっています。

これについて、近藤会長は「行政で授業料に縛りのようなものを設けてしまうと、教育が平準化してしまう。私立学校は、学校によっていろいろな教育があるからこそ存在意義があり、それに応じた授業料を決めていることを考慮してほしい」として、授業料の上限を決めず支援することが必要だと話していました。

街の反応は

高校の授業料の実質無償化に向けた都の動きについて、新宿で話を聞きました。

中学3年の子どもがいる40代の女性は「共働きなので、所得制限のことを考えずに無償化してもらえるのはうれしい。子どもが進学先を選ぶ幅が広がるし、高校のうちに大学の授業料もためられて家計的にもありがたい」と話していました。

また、2人の子どもを育てている夫婦のうち40代の夫は「所得制限なしの無償化で子どもたちに学びの機会ができることは賛成だが、財源がどこなのかは気になります」と話していました。

また、30代の妻は「自分は私立の中高一貫校に通ったが、授業料が高く家族に負担をかけたので、子どもにはお金のことを考えず行きたい道を進んでほしい。世帯年収910万円というのは共働きだと超えてしまうし、そこを超えないと子育てにはお金が足りないので、所得制限なく適用されるのはいいと思う」と話していました。

一方、40代の女性は、「高校生と保護者にとってはいいと思うが、公的な支援は子どもや高齢者ばかりで、高校生以上の若者にも支援をもっとすべきだ」と話していました。

松野官房長官「都道府県と連携」

松野官房長官は午後の記者会見で「高校生などの修学支援は、国の制度に加え、各地域の私立学校に通う生徒数や割合、学費などのさまざまな実情を踏まえて自治体で支援が行われており、基盤となる国の制度と自治体による支援が相まって行われることが重要だ。国としては今後も都道府県と連携して高校段階の教育費負担の軽減に取り組みたい」と述べました。