日本のメディアはほとんど報道していないが、米議会上院は現地時間15日未明、暗号資産(仮想通貨)の市場構造を定める「クラリティー法案(Digital Asset Market Clarity Act)」を本格審議に進めるための採決を行い、賛成50票、反対49票で否決した。
この法案は、米国における暗号資産の将来を占ううえで極めて重要な法案だった。暗号資産を所管するのはSEC(証券取引委員会)か、それともCFTC(商品先物取引委員会)か。これまでさまざまな論争があったが、法律上の線引きは明確ではなかった。そこを明確に規定するのがクラリティー法案である。暗号資産の市場構造を定める重要法案と位置付けられていた。
15日に実施されたのは、法案の本格審議を進めるための手続き上の採決だった。この採決には、上院100議席のうち60票の賛成が必要だった。最終的に賛成票は60票に届かず、法案は審議入りを阻まれた。
とはいえ、否決=廃案とはいえないところが、米議会の面白いところだ。
手続き上の採決を前にした14日、共和党はクラリティー法案の修正案(最終案)を公表している。この修正案には、民主党が要求していた倫理条項など、要求項目の大部分が盛り込まれていた。
その代表例が倫理条項である。
トランプ大統領が所有している暗号資産関連事業については、米政府倫理局(OGE)が7月1日に公表した資料によると、2025年の関連所得は約14億ドルに上っていた。
これを民主党は問題視していた。上院銀行委員会の民主党筆頭理事、エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は7月22日に声明を発表し、草案が「(トランプ氏の)次の14億ドルの仮想通貨利益を吸い上げることを何ら妨げていない」と批判していた。
最終修正案では、「連邦政府の公職者が、自分の公的権限と暗号資産ビジネスを結びつけて利益を得ることを制限する」ことを明記している。
米上院銀行委員会デジタル資産小委員長で、クラリティー法案の推進者であるシンシア・ルミス(Cynthia Lummis)上院議員は、トランプ大統領が「米国史上最も厳しい倫理規制の一部」を自発的に受け入れたと説明している。
トランプ大統領には珍しく、自分の利益を制限してまで、法案の社会的重要性を受け入れたというわけだ。
では、上院民主党はどうして法案を審議に進めるための手続きに賛成しなかったのか。ここが、この問題のポイントの一つである。
理由は単純だ。中間選挙を間近に控え、民主党議員はこれまでの反対姿勢を維持せざるを得なかったということだ。
暗号資産専門メディアの「CoinPost」によると、共和党推進派は「民主党の同僚議員も、『意図して設計されたと分かる市場構造』の必要性を理解している」としたうえで、「レームダック会期まで待つことになるだろう」と述べている。
レームダック会期とは、2026年11月の中間選挙後から新議会召集までの期間を指す。選挙結果を意識せずに済むため、「支持基盤への配慮から慎重だった(民主党の)議員が態度を変えやすく、与野党の非公式な合意形成が進みやすい」とCoinPostは説明する。
合意が成立するかどうかは、まだ分からない。
だが、理想より現実、法案より選挙を優先するのは、古今東西、どこの国も一緒だろう。
共和党推進派の甘い期待は、レームダック会期に実現する可能性があるように思える。