
[東京 18日 ロイター] – 日銀は18日の金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート翌日物の誘導目標をこれまでの1.0%程度から1.25%程度に引き上げることを7対2の賛成多数で決めた。市場関係者に見方を聞いた。
◎来年には政策金利2%到達、不確実性も
<東短リサーチ チーフエコノミスト 加藤出氏>
7月末の日米協調介入以降、ベセント米財務長官の日銀利上げに対する発言が強硬化し、今日の会合前に利上げは既に100%近く織り込まれていた。今回の決定にサプライズはない。ただ、高市政権に任命された浅田統一郎、佐藤綾野の2人の審議委員は反対票を投じるのだ、ということがマーケットに改めて印象付けられた。
来年、田村直樹、高田創両氏の後任にリフレ派が選ばれるかどうか注目されてくるだろう。反対票が4票になるのかという連想が働く。それでもまだ5―4ではあるが、来年7月に代わる二人の後任もリフレ派になると、28年3月、4月に任期が来る総裁・副総裁もリフレ派になるのかという邪推がマーケットで出始めるだろう。それが織り込まれていくと、円安と長期金利上昇が激しくなる恐れがある。
これまではベセント長官が日銀に利上げしろということで、インフレ制御・ビハインドザカーブに対する懸念がやや和らいできたが、先行きは懸念がくすぶり続けるだろう。日銀の決定は米国とは対照的。米連邦準備理事会(FRB)は16日、トランプ大統領からの強烈な圧力が存在しながらも、全員一致で利上げが決まった。日銀は、はるかに低い金利水準でありながら、政治からの影響が色濃く出てしまうことは、インフレおよび為替動向において先行き不安を感じさせる。
先進国の中で、政府が中央銀行の幹部人事を恣意的に行おうとしているケースというのは日米だけ。ただ米国の方がいろいろなブレーキが働いて今回は全員一致で利上げを決めたわけだが、日本の方はそうしたブレーキが働きにくいので、先行きが懸念される。
今後は、ビハインド・ザ・カーブに陥らないような追加利上げのペースがポイント。3カ月に1回25ベーシスポイント程度の利上げなら、来年年央あたりには政策金利が2%に到達し、ビハインド・ザ・カーブは回避できるとの声もあるが、その時の状況にもよるので不確実性がある。私の予想では、来年の9月までには政策金利が2%に達すると思う。不確実性はあろうが、為替との関係で利上げせざるを得なくなる。
過度のインフレを懸念している中央銀行にとって、3カ月に一度25ベーシスポイントの利上げは正直物足りないかもしれない。ただ日本の場合、過去30年政策金利を0.5%以下に抑えてきたことや、高市早苗政権の慎重な姿勢も相まって、妥当なペースになるのではないか。
声明文を見ても、基本はこれまでのトーンと同じ。特に物価の上振れを強調しているわけではない。今日の植田和男総裁の記者会見も7月とそう大きくは変わらないだろう。外為市場では、今回の利上げで植田総裁がタカ派に大転換を図るのではとの観測があるようだが、最近の氷見野良三副総裁の講演や自身の主要20カ国(G20)でのコメント、今日の声明文を見る限り、過度の物価高に懸念を表明するような発言にはならないだろう。
◎全体的にハト派受け止め、景気懸念の後退が株高促す
<大和証券 チーフストラテジスト 坪井裕豪氏>
全体的にハト派の受け止めだろう。ごく一部では50ベーシスポイント(bp)の利上げを警戒する声もあったが、そうならなかった。反対票が2票あり、利上げペースがどんどん速まると想定するのは難しいと受け止められた。
ベセント米財務長官のリフレ政策に対する否定的な発言もあり、従来の想定以上のタカ派化による景気への悪影響に対する懸念が出ていたが、それが後退し株高の反応を促した。
◎為替は反対票に反応し円安進行、全体的にハト派の受け止め
<T&Dアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネージャー 浪岡宏氏>
日銀は市場の想定通り政策金利の引き上げを決定したが、反対が2票あり、そのヘッドラインに反応してドル円は円安が進行したようだ。また、決定内容についてもそれほど目新しくタカ派な印象は受けず、全体としてはハト派と受け止められた。
この後の植田和男総裁の会見では、利上げに対してどれだけ切迫感があるのかを見極めたい。会見でも植田総裁がハト派的な姿勢を示すと、さらにドル買い円売りが進行する可能性があるだろう。
◎タカ派的、利上げ継続姿勢示す
<SOMPOインスティチュート・プラス 上級研究員 小池理人氏>
日銀の決定内容はタカ派的だったが、市場ではさらにタカ派的な内容を織り込む向きもあったため、発表後は円安方向に反応したと考えられる。
タカ派的とみる理由は、声明文で緩和的な金融環境であることを指摘し、今後も金融緩和の度合いを調整していくとの記述が盛り込まれたことだ。物価の上振れリスクにも言及しており、原油価格だけでなく、人工知能(AI)関連需要による価格上昇、円安、賃金と物価の相互参照メカニズムなど、複数の要因を挙げていた。
佐藤綾野委員が浅田統一郎委員とともに反対したことについては、現時点で大きな影響はないとみている。反対自体は予想通りであり、全面的に利上げに反対しているというより、タイミングやペースに対する反対と受け止められる。利上げそのものに強く反対する姿勢ではないため、金融政策の正常化を進める上ではむしろポジティブに評価できる。
いわゆるリフレ派的な委員が政策委員会で過半数を占めるような状況になれば見方は変わり得るが、少なくとも当面は、委員の反対によって金融政策の正常化が大きく妨げられる状況には至らないだろう。