

[ワシントン 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 米連邦準備理事会(FRB)には、過去の金融危機時に創設され、その後ほとんど使われることなく眠っている融資制度が数多く存在する。ベセント米財務長官はこの数日、そのうちの1つを持ち出し、日本の為替市場への介入に活用した。狙いは円相場の安定化にある。円の急激な変動を抑えることで、日本が保有する約1兆1000億ドルの米国債を売却するといった措置を講じる必要性を低下させようというものだ。だがこの動きは、トランプ政権がFRBの権限領域に踏み込もうとする意欲を依然として失っていないことも示している。またFRBのウォーシュ議長が就任直後に「つまずいた」ことも、こうした介入を後押しする要因となった。

今回の円安定化策では、FRBが2020年に外国政府向けに導入した一時的なレポ(買い戻し条件付き取引)制度が利用された。世界で最も強力な中央銀行であるFRBは、新型コロナウイルス禍の初期のような大規模な流動性危機が発生した際に、この種の融資制度を設けることがある。こうした制度はFRBが運営するものの、通常は財務省との連携の下で設計される。これは国際経済政策の遂行において財務省が主導的な役割を担うことを反映しており、緊急時には一般的な対応だ。もっとも危機が去った後も制度が完全に廃止されることはまれで、多くの場合は温存されて政策当局が必要に応じていつでも利用できる状態に置かれる。
ベセント氏にとって、その温存された制度を使ってFRBに影響力を行使するタイミングとしてはこれ以上ないほど好都合だった。FRBの独立性は最近、ベセント氏とトランプ大統領が試みた最初の介入、すなわち現職理事の解任を巡る動きを米連邦最高裁判所が退けたことで再確認された。しかし最高裁の判断は、独立性が主として金融政策の運営に関するものであることも明確にした一方で、金融規制などの分野については行政府が影響力を行使することが正当化され得るとの見方を示している。外交政策も、恐らくそうした正当化できる領域の1つだろう。
ウォーシュ氏は指名承認の過程を通じて、FRBと財務省の関係を見直したいとの考えを繰り返し表明してきた。だがその船出は順調とは言えない。先週の記者会見では、今後の金融政策の方向性について示唆を避けた結果、市場の失望を招いて米10年国債利回りは3年ぶりの高水準まで上昇した。そしてベセント氏はさらに踏み込み、日本支援で利用された制度の拡大をFRBに求めている。この制度は米国債を保有する外国当局が、その保有債券を担保として一時的にドル資金を調達できる仕組みだが、現在の利用上限は600億ドルに設定されている。
もしウォーシュ氏がFRBの運営に関してベセント氏へ過度な裁量を認めれば、連邦公開市場委員会(FOMC)の他のメンバーが介入し、財務省によるこうした融資制度へのアクセスを制限しようとする可能性もある。「独立した中央銀行」とは何を意味するのか。その定義はいまだ完全には固まっていない。
●背景となるニュース
*ベセント米財務長官は4日、日本政府と米国当局が前週に実施した円買い支えのための協調介入を受けて、日本の円安定化への取り組みを支援するため米国は「必要なあらゆる措置を講じる」と述べた。 もっと見る
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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