米国とイランは、再び対立局面に突入した。今回の対立は、単純にトランプ氏の発言にイランが反発したことが原因ではなさそうだ。最近のニュースを見る限り、むしろイラン側が対米姿勢を強めているように見える。
拭っても拭っても湧き出てくる「黒い霧」。この正体がはっきりしない限り、ホルムズ海峡の本格的な開放は実現しないのではないか。
最近の動きを見る限り、今回の米国とイランの対立を煽り立てているように見えるのはイラン側だ。
少し前には、モジタバ・ハメネイ師の死亡説が流れた。根拠も情報源もはっきりしないが、ちょうどこの頃からイラン側の対応が急変したようにも見える。そこでChatGPTに、この間の動きを聞いてみた。
回答はこうだった。
「モジタバ師の死亡説が流れたことが、イランの姿勢先鋭化の直接の原因」と断定するのは、現時点では時期尚早です。むしろ資料を時系列で追うと、①6月の米・イラン暫定合意→②米側による合意違反との認識→③7月の戦闘再燃→④モジタバ師の長期不在・死亡説→⑤イラン国内の権力・軍事体制の再編→⑥ホルムズ海峡を交渉カードから「戦争終結の条件」へ格上げ、という流れが見えてきます。
なるほど。死亡説を軸に一連の動きを説明するのは、流れの一部を切り取ってしまうため、時期尚早というわけだ。
ただ、こうした流れは8日のイラン側の主張からも伺える。イラン側は、オマーンとの協議でホルムズ海峡の航路設定について合意したとしても、それだけで海峡を再開するわけではなく、米国がイラン側の条件を受け入れることが必要だと主張した。
そして9日、アッバス・アラグチ外相は、米国に対してさらに厳しい姿勢を示した。すなわち、①米国との直接交渉は現時点では行わない、②6月の暫定合意を米国が破っている間は交渉を再開しない、③ただし仲介者を通じたメッセージの交換は続ける、④オマーンとのホルムズ海峡協議は進める、⑤しかし海峡を全面的に再開するには、米国側のさらなる譲歩が必要、というものだ。
11日には、国家安全保障最高評議会(SNSC)事務局長に就任したばかりのモフセン・レザイ氏が、「米国が行動を変えない限り、ホルムズ海峡は開けない」という趣旨の強硬姿勢を示した。
実はレザイ氏は9日に事務局長に就任したばかりだ。モジタバ師の死亡説が広がった時期からイランの動きが激しくなっているように見えるが、この人事もその一つなのだろうか。レザイ氏は革命防衛隊(IRGC)の元司令官であり、今回の起用はイランの安全保障政策における軍・強硬派の影響力を考えるうえでも注目される。
さらに8日、メヘル通信が、男性信徒と会話するモジタバ師の写真を公開した。撮影日時も場所も明らかにされていない写真で、写真の中の本人は元気そうに見える。
これが同師の現在の姿なのだとすれば、なぜもっと早く公の場に姿を見せなかったのか。死亡説を否定するために公開されたとみられる写真が、逆に「なぜ今まで姿を見せなかったのか」という疑問を呼び、死亡説や重病説をめぐる憶測を強めてしまうという、皮肉な結果になっている。
これだけではない。
10日になると、モジタバ師は、欠員状態となっていた革命防衛隊司令官を含む6人の軍・治安部門の幹部を任命した。まるで死亡説を否定するかのように、最高指導者としての活動を相次いで示しているようにも見える。
しかし、モジタバ師の現在の姿は、依然として「黒い霧」に覆われている。何が事実なのか、外部からはよく分からない。
むしろ、同師の健在を強調すればするほど、「なぜ本人が公の場に姿を見せないのか」という疑問が強まり、重病説や死亡説など、「不在」にまつわる憶測を逆に増幅させているようにも見える。
ペゼシュキアン大統領が最近、モジタバ師と長時間にわたって会談したとの報道も流れている。だが、それも同師の現在の健康状態や実際の権力掌握状況を外部から確認できる材料になるわけではない。
一方、アラグチ外相は、米国に対する損害賠償を求める姿勢を強めているほか、凍結資産の解除なども交渉条件として挙げている。実際、8日にイラン側が示したホルムズ海峡再開の条件には、米国による戦争損害への補償、制裁解除、凍結資産の無条件解除などが含まれている。
これでは、停戦合意の実現は簡単ではない。
交渉というのは、基本的には双方の譲歩の上に成り立つものだろう。もちろん、イランだけが譲歩すべきだという意味ではない。しかし、現在のイラン側の要求を見る限り、少なくとも表面上は「米国が先に譲歩すべきだ」という姿勢が強くなっている。
これで停戦交渉が進展するとすれば、国際政治はわれわれの想像をはるかに超えた次元で動いていることになる。
もちろん、イランだけが譲歩すべき筋合いではない。だが、最近の過激とも見えるイランの姿勢転換は、いったい何が理由なのか。今回の戦術転換は、国内向けなのか、米国向けなのか。それとも、チャーリーが指摘するように、革命防衛隊を中心とした軍事・安全保障体制の再編の一環なのか。
それすら、よく分からない。
いつもなら明確に反応する米国が、今回はやけに沈黙を守っているのも不思議だ。
ロイターによると、株式市場関係者の一人は、今回の動きを「やや真剣に考え始めている」という趣旨の発言をしている。だが、それだけのことなのだろうか。
イランと米国をめぐる国際政治の闇は、あまりにも深い。