◇ビジョンなき権力闘争◇
7月22日から30日までニュージーランド(クライストチャーチ)に観光旅行で滞在していた。30日未明に帰国、久しぶりに国内ニュースを見て暗澹たる気分になっている。日本を留守にしている間に熊本地震が勃発、高市首相が飲食料品の消費税率を1%にすると表明(30日)した。翌31日には財務省の幹部人事も発表されている。
熊本地震の悲惨な状況に目を奪われると同時に、高市首相の減税表明直後に、河野太郎氏が消費減税反対をぶち上げている。まるで事前に準備していかたかのようなタイミングだ。今後の政局を占う上でも極めて重要な反対表明だった気がする。これより前に“ドリル優子”こと小渕優子氏が党税調のインナーを辞任すると表明している。河野氏の発言は「反高市勢力が公然と動き出す」サインのようにみえる。
自民党内では高市首相支持派とアンチ高市派の間で陰湿な権力闘争が続いている。大雑把に分ければ、「責任ある積極財政」で日本の再生を目指す親高市派と、DSの総本山である財務省の息がかかった財政健全派の戦いと言っていいだろう。勢力図ははっきりしないが若手に多いのが親高市派で、反高市派は党の幹部やベテラン議員に多いような気がする。
河野氏の発言に注目したのはこの人が麻生派に所属していることだ。麻生派を率いる麻生太郎氏は高市政権の生みの親である。鈴木俊一幹事長はその麻生氏の妹と結婚している。麻生氏は鈴木氏からみれえば「義理の兄」という関係だ。それだけではない。この2人は長い間、財務大臣の職を担っている。要するに財務省と阿吽の呼吸で繋がっているのだ。
河野氏の悲願は言わずと知れている。総理大臣になることだ。河野氏というより河野一族の悲願かも知れない。河野氏に明確な将来ビジョンがあるかどうかよく知らない。そういう意味でこの人に注目したことはほとんどない。河野氏だけではない。石破前首相、岸田氏や菅元首相も同類だろう。もっと言えば小沢一郎氏も同類ではないだろうか。とにかく権力を握ることだけが目的なのだ。
◇麻生氏と高市氏の距離感◇
自民党内の権力闘争で注目しているのは麻生氏と高市首相の距離感だ。河野氏が単独で高市首相に反旗を翻したとは思えない。あの発言の裏には多くの反高市派の期待が込められていたような気がする。ひょっとすると阿吽の呼吸で麻生氏の了解を得ていたのではないか。闇将軍とは言わないが、キングメーカーの腹の中は複雑だ。状況が複雑になればなるほど、キングメーカーの力がは際立ってくる。
もう1つの注目点は現閣僚の中にも「首相になりたい人がいることだ」。麻生氏とも良好な関係を維持している。その人の名は茂木敏光外務大臣だ。1955年10月7日生まれ。誕生日がくれば71歳になる。総裁の任期を3年として計算すれば次の次は2031年、76歳だ。来年秋に予定される次期総裁選が最後のチャンスだろう。ちなみに高市首相の任期は石破前総裁の残余期間である28年9月末までと決まっている。
問題は麻生氏が高市首相の「責任ある積極財政」を心底支持しているかどうか、いまだにはっきりしない。キングメーカーとして高市氏を支持しながら、茂木氏の首相就任を頭の片隅に置いているとすれば、河野氏の反旗を黙認する可能性だってある。
高市首相の意向を受けて自民党内でも消費税減税の議論が始まっている。国民会議の議長を務めた小野寺氏はこの会議で「減税反対の議論が多かった」とメディアの前で公表している。推進派は「圧倒的に賛成派が多かった」と説明している。どちらが正しいかはこの際どうでもいいだろう。小野寺氏自身が元々健全財政派だ。自民党内は最初から魑魅魍魎なのだ。
◇いまだに暗躍するミセス・ワタナベ(Mrs. Watanabe)◇
個人的には高市氏と麻生氏はいずれ決別すると見ている。勝負の分かれ目はどちらが党内の多数を握るか、その一点にかかっている。党内の力関係とは別にこの2人の戦い、高市氏が勝てば日本経済は再生する、麻生氏が勝てば日本経済の再生は誰が首相になってもない。ただそれだけのことだ。
ちなみに陰で蠢く財務省。「失われた30年」はものづくり大国・日本の工場が海外に移転し、国内が空洞化しただけではない。円の空洞化も同時に始まっていたのだ。日本の企業が海外でどんなに稼いでも、その資金はドルのまま海外に留まっていた。経常収支は黒字でも、円買い(円転)で日本に還流するドルはほとんどなっかったのだ。円安の原因は健全財政にあったと言っても過言ではない。
海外投資をする個人を総称して外為市場では「ミセス・ワタナベ(Mrs. Watanabe)」と総称されていた。彼女はいまだに健在なのだ。問題の本質に迫らない主要メディアの報道は、ビジョンなき自民党内の権力闘争に似ている。